『科捜研の女』長寿ドラマの原動力は、沢口靖子の“清らかな魅力”。事件発生現場に潜入!
「マリコは分身のような存在」(沢口)
マリコを当たり役として20年以上にわたって演じてきたて沢口にとっても、本シリーズの映画化は大きな喜びだ。
沢口は「まさか『科捜研の女』が映画化されるとは思ってもいませんでしたので、夢のようなお話だと喜んでおります!」とにっこり。映画への出演は久しぶりのこととなったが、「大きなオーディションで選んでいただき、映画でデビューを飾らせていただきましたが、当時を振り返ると女優としての意識がまだまだ低く、素人同然の恥ずかしい状態だったなと思うんです」と述懐し、「しばらく映画のお仕事にご縁がなかったのですが、今回すっかり馴染んだ『科捜研の女』という作品でスクリーンに登場させていただけることになり、恵まれたチャンスをいただいたなと思っています」と感謝しきり。
また内藤、若村というお馴染みのメンバーとの掛け合いについて、沢口は「皆さん、前向きで協力的で、脚本+α現場でおもしろいものを作りたいという想いであふれていらっしゃる。アイデアを出したり、相談したりすると快く相談に乗ってくださいます」とやはり心地よいものである様子。「例えば、土門刑事とラストシーンの撮影を行った際には、『そのセリフの裏に込められた想いを出したい』と相談したら、内藤さんは『ああ、いいよ!』と乗ってくださって、ちょっとした+αの想いを表現することができました」と話す。
「私にとって、マリコは分身のような存在」と愛情を込めた沢口。プライベートでも「なぜが物事を分析してしまう」そうで、「友だちと会っている時にも『役の影響じゃないの?』と言われたことがあります」と微笑みながら、「マリコの魅力は、いつも前向きなところとあきらめない姿勢。これこそが、作品に臨む原動力にもなっているのですが、エジソンのように1万回失敗しても真実を見つけようとする精神が、彼女の魅力だと思っています」と吐露。「科捜研の女」シリーズは「私にとって、代表作の一つであり、この映画が私の節目の作品になることは間違いありません」と力を込めていた。
ツッコミどころのある展開も魅力。沢口靖子の“清らかな心”が、前人未到の記録に挑む原動力に!
沢口は「マリコは分身のような存在」と打ち明けたが、中尾プロデューサーも「沢口さんは、マリコそのもの。真面目でストイック、仕事への集中力がものすごく高い」と惚れ惚れ。2019年にはシリーズ20周年を記念して、初の1年間ロングラン放送を成し遂げ、いまや現役最長寿のドラマにもなった本シリーズだが、まさにその沢口=マリコの誠実な姿、清らかな心こそ、前人未到の記録に挑み続ける原動力となっていると話す。
「沢口さんは科学捜査の知識もたくさん身につけていらして、検視の場面を見ていても『プロなのではないか』と思うくらいです。日々、お休みの日もホテルのお部屋にこもって練習されているそうです。セリフでは専門用語も多いですが、それもご自身のなかにしっかりと染み込ませてから、現場に来られます。科学的に正しいやり方、手順はどのようなものなのかなど、ものすごく突き詰める方です」と沢口の努力家の面を称え、「そういった集中力の高さが、マリコの魅力であり、沢口さんの魅力」とコメント。「その姿に触発されて、スタッフも誠実に撮影に臨んでいます。沢口さんは、自分が目立ちたいとか、そういった気持ちで役を演じているのではなく、『誠実な作品づくりをしたい』という清らかな心で撮影に向き合っていらっしゃる。だからこそ、どんなに大変なことがあっても、スタッフたちも『沢口さんがいらっしゃるなら』と頑張ることができたり、『努力をすればきっと報われる』と思うことができている。みんな、沢口さんのひたむきさに支えられています」と語る。
「ドラマシリーズでは助監督として現場に長年、入っていました」という兼崎監督も、「心が折れそうになったとしても、沢口さんに接していると『いろいろなパターンを考えて、撮影に臨んでいこう』という気持ちになれるんです」とキッパリ。本シリーズが20年以上愛される秘訣についても、「僕らがみんな、沢口さん=マリコという船に乗っているからこそ、愛されるシリーズになった」と話しつつ、さらに「『科捜研』って、土門が電車に轢かれたりと、なかなか無茶な展開があったりしますよね(笑)。そういった脚本に対しても、現場が真摯に応えていくことで、謎の爆発力が生まれるような気もしていて。そういった無茶振りがあることで、ツッコミどころもあり、新鮮味もあるシリーズになっているのではないかと思います」と楽しそうにアピール。
中尾プロデューサーも「ツッコミどころと、誠実さ。その2つの柱を両立させていることで、ここまで愛されるシリーズになったのでは」と笑顔を浮かべ、「本シリーズを作りあげるうえでは、少し突飛なことをやってみたりと、お茶の間の方々が楽しく突っ込めるような、サービス精神も大事にしています。それがふざけすぎているように見えないのも、マリコ=沢口さんという鉄壁のような存在がいるから。どんなことをしても、誠実な面が損なわれないんだと思います」と胸を張る。
劇場版で描かれるのは、“世界同時多発不審死事件”。兼崎監督が口にした「無茶な展開」とも言えそうな、壮大なスケールの事件だ。果たして、マリコたちは無事に事件解決へと辿り着けるのか。沢口は「20年間の集大成として取り組んだ作品です。マリコの決死の決断にご期待ください」と呼びかけていた。事件解決に向けて、マリコの元夫・倉橋拓也役の渡辺いっけい、マリコの父・榊伊知郎役の小野武彦をはじめ、これまでドラマに彩りを添えてきたレギュラーキャストも大集結することから、兼崎監督は「アベンジャーズが集まったよう」とニヤリ。「20年間やってきたことによって、いろいろなキャラクターの成長も見せられるし、彼らが登場することによってまたストーリーに深みが出る」、中尾プロデューサーも「科捜研をいつも支えてくださっているファンの方の想いに、応えられるような映画になっていると思います」とアピールしていた。
取材・文/成田おり枝
※榊マリコ・榊伊知郎の榊は木へんに神が正式表記
※兼崎涼介の崎は立つ崎(たつさき)が正式表記