イラストで世界観まるわかり!『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』ガンダムはじめて講座
進化したモビルスーツの技術
『閃光のハサウェイ』の舞台、宇宙世紀0105年は、政治状況が悪化しているが、「モビルスーツ」の技術はどんどん進化を遂げている。モビルスーツは、宇宙空間での戦闘で様々な戦況に対応できる汎用性の高さを求めて開発された人型兵器。もともとが無重力空間=宇宙での使用が前提で、地球での運用時には飛行できない、または制約される問題が発生する。一年戦争では、推進剤を使用して大きくジャンプすることしかできず、単独移動時は歩くしか手段がなかった。
そこから、地上での行動範囲や運用の幅を広げるための研究が進められる。当初はモビルスーツを載せて移動する輸送補助用の「サブ・フライト・システム」を使用。その後、技術革新により航空機形態や飛行形態に変形させて空中を移動する技術が登場する。しかし変形は機体構造の複雑化や整備の負担、運用性の悪さなどのデメリットも生じさせていた。
その後も「モビルスーツを単独で飛行させる」研究が続けられ、『閃光のハサウェイ』の時代には、大型の艦船を浮揚させる技術を小型化し、モビルスーツに組み込む「ミノフスキー・フライト」という技術が完成する。この技術によりモビルスーツは変形しなくても空を自在に飛ぶことができるようになったのだ。ただ、ミノフスキー・フライトはまだ初期段階のため、一部の試作機にしか搭載されておらず、それが劇中に登場する「ペーネロペー」と「Ξ(クスィー)ガンダム」になる。
劇中での他のモビルスーツとの違いが強調される戦闘シーンの背景にはこうした“技術の進化”というバックグラウンドを頭に入れておくと、より本作を楽しめるはずだ。
あらためて『閃光のハサウェイ』の概要を知る
以上が覚えておきたい3つの基礎知識である。それらを踏まえて、本作のストーリーについて触れておこう。第二次ネオ・ジオン戦争から12年後の宇宙世紀0105年。地球連邦政府の腐敗は地球の汚染を加速させ、地球連邦政府は民間人を宇宙へ連行する非人道的な「人狩り」政策を行ってきた。そんな連邦政府に対し高官を暗殺する苛烈な行為で抵抗するのが、先述した反地球連邦政府運動「マフティー」だ。そのリーダーであるハサウェイは、アムロとシャアの理念と意志を宿した戦士として道を切り拓こうとする。だが連邦軍大佐のケネス・スレッグと謎の美少女ギギ・アンダルシアとの出会いが彼の運命を大きく変えていくことに…。
これまでのガンダム作品の多くは「戦争」を主軸に物語が作られてきた。しかし、『閃光のハサウェイ』では、表立った「戦争」を描かず、戦争の後の状況が抱える政治や社会的な問題に踏み込むような物語となっている。架空の世界の社会情勢ながら、自分たちが住む現実社会とも重なる問題点をどのように受け止めるのか?今回の基礎知識をもとにモビルスーツの迫力ある戦闘を楽しむ一方で、ガンダム作品らしいリアリティと深みのある物語をぜひ劇場で味わってほしい。
文/石井誠 イラスト/にーやん