生存難易度はさらにアップ!劇場で思わず息をひそめる…『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』をレビュー
コロナ禍で映画館が軒並み営業休止状態だったアメリカの映画館がようやく再開し、公開されるや猛ダッシュのメガヒットを記録したのが『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』(6月18日公開)だ。3年前に「音を立てたら、即死。」という超明快なコンセプトで劇場の観客を震撼させた『クワイエット・プレイス』の続編である。
いったいなぜ「音を立てたら、即死。」してしまうのか?ネタバレになるので詳細は避けるが、とにかく聴覚がすぐれた恐ろしい“なにか”が、どこからともなく襲いかかり、瞬殺で命を奪ってしまうのだ。電話などの通信手段は失われ、孤立しながらもかろうじて生き残った主人公一家は、無人の町を裸足で歩いて食料や医療品を集め、農場に閉じこもるように暮らしている。しかし、一家の母親は妊娠していて出産間近。まともな医療設備もない民家で、はたして音を立てずに出産するなんて可能なのか!?
1作目で、人類に降りかかった滅亡の危機に加えて、“音を立てずに出産”という不可能なミッションを抱えた一家の父親と母親を演じたのは、私生活でも夫婦である、Amazonドラマ「トム・クランシー/ CIA分析官 ジャック・ライアン」の主人公などで知られるジョン・クラシンスキーと、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(14)や『メリー・ポピンズ リターンズ』(18)のエミリー・ブラント。さらにクラシンスキーにとっては初の監督作であり、まさに二人三脚で新感覚スリラーの傑作を生みだしたことになる。
観客の間に生まれる「一緒にサバイブしよう!」という一体感
「クワイエット・プレイス」シリーズには、ぜひ映画館で鑑賞してほしい理由がある。通常なら映画館では静かにするのがマナーだが、ホラーやパニック映画は、大勢の観客と一緒に怖がったり、時には悲鳴をあげて楽しんだりすることも許されるジャンルだ。ところが『クワイエット・プレイス』は、「声を出したら死ぬ!」という緊張感がビシビシ伝わってくるので、観客も必死に息を殺して観てしまうのだ。
スクリーンの中の家族も客席で観ているわれわれも、「決して声を出してはいけない」というルールを共有し、「一緒にサバイブしよう!」と一体感に包まれる。これほどまでにストイックな空間が生まれ、登場人物と観客が一つになれる作品も珍しい。映画を観終えた時には戦友同士のような絆すら生まれているという、アトラクション的エンターテインメントなのである。
もう一つ、『クワイエット・プレイス』には惹き込まれずにはいられない理由がある。究極のピンチを前にした家族の心情描写が、あまりにもリアルに迫ってくることだ。なんとしても子どもを守ろうと悲痛な決意を固める母親と父親、弟たちのためにしっかりしようと踏ん張る長女、恐怖を克服できずに悩む長男、そしてまだ幼すぎて危機的状況がのみ込めていない次男。どこにでもいるごく普通の家族だからこそ、彼らの頑張りに感情移入してしまうのだ。
■『クワイエット・プレイス』
Blu-ray 発売中
価格:1,886円+税
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
■『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』ムビチケ前売券(オンライン)発売中
・前売一般:1,500円
・販売終了日 : 6月17日(木)