狂気的な“愛”にゾクッ！「ラチェッド」＆『RUN／ラン』主演のサラ・ポールソンから目が離せない
最愛の娘を徹底的に管理しようとする狂気的な母性愛
そんなポールソンには映画でも見逃せない主演作がある。『search／サーチ』(18)で注目された俊英アニーシュ・チャガンティが監督を務めたスリラー『RUN／ラン』(公開中)が、それだ。
大学生活に夢を馳せている車椅子の少女と、献身的に彼女の世話をしている母親。強い絆で結ばれているかのように見えた母と娘の関係は、母親が新しい薬を娘に与えだしたことから軋み始める。薬の成分に疑問を抱いた娘が調べてみると、それは人体に害を及ぼすものであった。なぜママは、こんな薬を？やがて、これまで信頼してきた母親の恐ろしい秘密が明らかになっていく。
母親を演じるポールソンは、ここでもミステリアスなシングルマザーになりきり、スゴみを見せつける。悲しい過去を匂わせつつ、母性愛と思えたものがしだいに狂気の色を帯びてくる、そんな毒母への変貌は圧倒的。ラチェッドにも狂気的な部分はあったが、本作の場合は最愛の娘に対してそれを向けている点が危うくも恐ろしく、身体的なハンデを負っている娘の苦境ともども目が離せなくなる。
ボールソンはこれまでにも、『それでも夜は明ける』(13)や『キャロル』(15)、『オーシャンズ8』(18)など高く評価された作品で好助演を見せてきた。意思の強さを感じさせるキリッとした表情と、その裏側にある複雑な感情。彼女の表現力の本領発揮とも言える「ラチェッド」と『RUN／ラン』で、背筋が凍る感覚を堪能してほしい。
文/有馬楽
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