『ザ・スーサイド・スクワッド』が最高の集大成となる予感!?映画ファンが厚い信頼を寄せる“ジェームズ・ガン”という才能をひも解く
ジェームズ・ガンの魅力と情熱が注ぎ込まれた『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』
『スーパー!』が評価され、ガンに舞い込んできたのがマーベルの超大作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』だった。宇宙の刑務所で結成されたクセ者チームの大冒険を描いた作品で、ヒネリを効かせたキャラ設定やあふれるユーモア、心に傷を抱えたはみだし者がガッツを見せる熱きドラマ、そして物語を盛り上げる音楽…と、ガンのオリジナリティ満載のヒーロー映画を創出し、マーベル・シネマティック・ユニバースに新たな風をもたらした。なお、ガンは欠点のあるヒーローが好きな理由について、「ダメな人間がヒーローになれるなら、僕らにもチャンスがあると思えてくるから」と語っている。
映画はいままでマーベル作品を触れてこなかった客層や音楽好きの心をもわしづかみにし、大ヒットを記録。親子の絆に焦点当てた超胸アツな続編『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(17)も成功に導いたガンは、いっきに人気監督の仲間入りを果たした。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)などマーベル作品に製作総指揮で参加したほか、2023年に公開予定の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』第3弾への続投も決定している。
トラブルに見舞われても、俳優ら仲間たちに支えられ、表舞台へ復帰
順調にキャリアを積み上げてきたガンだが、2018年にトラブルに見舞われる。2008~11年頃に発信した差別や小児性愛に関するツイートが掘り起こされ、メディアに公開されたのだ。この時期ガンは妻と離婚、ブラジルで臨んだ『サラリーマン バトル・ロワイアル』(16)の監督を降板するなどトラブルが続いた時期と重なるが、それは理由にならないだろう。問題視したマーベル・スタジオの親会社ディズニー・スタジオは、ガンとの契約解消を発表した。
大成功を収めたあとだけにガンをバッシングする声も多く上がったが、クリス・プラット、ゾーイ・サルダナ、デイヴ・バウティスタ、ブラッドリー・クーパー、ヴィン・ディーゼルほか『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の主要キャストが連名でガンを支持する声明を発表。さらに署名サイトChange.orgには復帰を求め43万を超える署名が集まった。
ガンが“ヒット作を作るだけの人間”ではない、ということだろう。ガンの公式な謝罪も考慮したディズニーは、翌19年に再雇用を決定。その間に手掛けたのが、マーベルと対極にあるDCコミックスの『ザ・スーサイド・スクワッド』というわけだ。マイケル・ルーカーや弟ショーン・ガン、ネイサン・フィリオンらガン作品常連組のほか、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』で組んだシルヴェスター・スタローンがキング・シャークの声で出演しているところにも、俳優たちからのガンへの信頼がにじんでいる。『マイティ・ソー バトルロイヤル 』(17)で監督を務めたタイカ・ワイティティが出演するなど、マーベルの名監督2人がDCコミックスで競演を果たすというのもポイントだ。
ノリと気合いで宇宙を救ったはみだし者の大活躍を描き上げ、映画ファンの信頼を得たガンが、『ザ・スーサイド・スクワッド』でメガホンをとるとなれば、その力量が存分に発揮されることは間違いない。軽快なナンバーをバックに、14人の悪党たちのキャラクターを愛ある視点で紡ぎながら、いままで経験したことのないクレイジーなデス・ミッションを展開してくれるだろう。はたして、悪党たちに希望や未来はあるのか?監督ジェームズ・ガンの集大成に期待したい。
文/神武団四郎