「中国には、ウルトラマンのような知的財産が必要」全世界興収記録を打ち立てた監督が語る、映画産業の課題とは?
「いまの中国の文化やクリエイターたちの現状を知ってほしいです」
総製作費は65億円、日本だけでも31億円を投じたとされている本作。大規模なロケを行っただけではなく、楽曲だけをとっても、マイケル・ジャクソンの「ヒール・ザ・ワールド」、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの「Welcome to TOKYO」、テレサ・テンの「路辺的野花不要採」など様々な名曲がふんだんに使われていた。なかでもジョー山中による『人間の証明』(77)のテーマ曲が、劇中のシーンをよりドラマチックに彩っている。
「僕がこの曲を聴いたのは小さい頃でしたが、とても印象に残っていました。当時、映画『人間の証明』は中国でも公開され、大きな反響を呼んでいたんです。そして僕が映画を勉強するようになってから、“証明三部作(『人間の証明』『青春の証明』『野性の証明』)”が反戦をテーマにしていることを知りました。この歌にもそういったメッセージが込められていたので、今回の映画にマッチしていると思いました」。
チェン監督は日本文化に造詣が深い。「日本には優秀な映画監督やアーティストがたくさんいます。例えば、巨匠である黒澤明監督や深作欣二監督、三池崇史監督、音楽でいえば久石譲さんなどもそうです。また、僕はよく日本のファッションブランドに注目していますし、いろんな面で日本文化の影響を受けていると思います」。
劇中では、妻夫木聡が「聖闘士星矢」、タイの人気俳優トニー・ジャーが「ちびまる子ちゃん」のコスプレをするシーンがあり、ここでもそれぞれの主題歌が流される。「僕はフィルムメーカーの立場から、海外のいろんなキャラクターや曲を入れることで、我々中国人がすでにこういった世界的に有名なコンテンツに触れていることを知ってほしいと思いました。つまり、映画を通して世界の皆さんに、いまの中国やクリエイターたちの現状を知ってほしかったのです」。
特にコロナ禍でその想いは一層強くなったそうだ。「世界各国との交流は続いていますし、世界中で上映される中国映画というメディアを通じて、より多くの方々との国際的な交流や相互理解を深められればと考えています」。