『うみべの女の子』原作者・浅野いにおとウエダアツシ監督が対談「同世代だからこそできた映画」
「映画を観て、僕はこういうことを漫画でやろうとしていたんだ!完璧!と思いました」 (浅野)
――実写映画化にあたり、制作陣がどうしても外せない条件としたのが、小梅と磯辺の性描写、はっぴいえんどの楽曲「風をあつめて」、台風のシーンという3つだったとか。
ウエダ「そうです。皆で話し合い、この3つの要素が1個でも欠けたら、『うみべの女の子』ではないということで、そこを肝に銘じてオファーしました。 台風のシーンはお金がかかるし、撮影も大変だったけど、あそこで『風をあつめて』が流れることの意味が物語の中でとても大きいので」
浅野「あそこは一番重要なシーンでした。物語自体にわかりやすい山場があるわけじゃないので、情景描写としてなにかを感じてほしくて。改めて映像になると、台風の情景に対して、『風をあつめて』はまったく相反するテンポの曲なのに、すごく相性がいいなと思いました。ウエダ監督の巧みな編集によるものですが、僕はこういうことを漫画でやろうとしていたんだ!完璧!と思いました」
ウエダ「ありがとうございます。僕もいち原作ファンとして、この映画の世界観を裏切りたくなかったので、万が一『風をあつめて』が使えなかったらどうしようと、結果が出るまで緊張してました」
――浅野さんからウエダ監督にリクエストされたのはどんな点ですか?
浅野「打ち合わせの段階で、原作を尊重してくれることも感じたし、脚本もおまかせでしたが、僕からアイデアを出させてもらった点もあります。最初は中学時代の小梅と磯辺の物語のみの作りで、高校生になった小梅のシーンがなかったけど、そこを入れてもらいました」
ウエダ「僕も迷っていたのですが、それを受けて中学生2人の恋愛ストーリーだけじゃなく、小梅の恋愛における半生を想像できるものにしようと切り替えました」
浅野「10代の子たちだけに向けた映画であれば、高校生のシーンはいらないかなと思ったけど、やっぱり僕たちの年齢で観ると、磯辺といろんなことがあっても普通に高校生になった小梅を見て安心できるので」