『マイ・ダディ』金井純一監督が明かす、ムロツヨシの魅力「演者と作り手、両方の視点を持っている方」

イベント

『マイ・ダディ』金井純一監督が明かす、ムロツヨシの魅力「演者と作り手、両方の視点を持っている方」

「奈緒さんと毎熊さんには、脚本以上に魅力的に演じてもらえました」(金井)

【写真を見る】要注目!オーディションで抜擢された新星、中田乃愛の芝居に涙があふれる…
【写真を見る】要注目!オーディションで抜擢された新星、中田乃愛の芝居に涙があふれる…[c] 2021「マイ・ダディ」製作委員会

また、特筆すべきは、ムロと堂々わたりあった娘ひかり役の中田乃愛だ。同役をオーディションで射止めた中田について、金井監督は「彼女はオーディションで選びました。まだなにも染まってない子を選ぶということは、なかなか勇気のいることでしたが、今回は中田さんに懸けようと決めました。ムロさんも最終オーディションで、中田さんと演じた時、とても響くものがあったと仰っていました」とキャスティング理由を述べた。

「ただ中田さんは決して器用な人ではないし、泣く芝居のリハでもなかなか泣けなくて。でも、きっと現場に行けば、本番でなんとかなるだろうと思っていたんです。最初の泣くシーンは自分が白血病だと、お父さんから告知されるシーンでしたが、『用意スタート!』って言ったら、彼女がボロボロ泣きだして。ムロさんは自分が泣くシーンじゃないから、必死に涙をこらえていたんです。ムロさんも『彼女が生まれ変わるシーンだった』とおっしゃられていました」。

金井監督は「そのシーンで、この子はできる!」と安心したが「そのあとのシーンでは、感情が入っていても泣けないシーンはありました」と述懐。「でも、いろいろと工夫して演出しつつ、ムロさんにもおつきあいいただき、彼女から最大の演技を引き出そうとやっていきました。特に、最後のほうで一番撮りたかったシーンは、日が暮れるまで、何度も何度もやりましたが、結果的にすごくいいシーンになりました」と手応えを明かした。

また、江津子役の奈緒や、ストリートミュージシャンのヒロ役を演じた毎熊克哉について金井監督は「脚本で想像した2人よりも、より魅力的に演じてもらえたと思います」とその演技を称えた。「奈緒さんは、泣くシーンじゃなくても、自然に涙が出たりする演技がとても良かったです。また、毎熊さんは歌がめちゃくちゃ上手くてピアノも弾けるんです。4月の練習段階ではギリギリだったけど、撮影が延期したので完璧に弾いてくださったから、実際に毎熊さんの音を使ってます」。

村上も「ライブで演奏する時、プロのピアニストに弾いてもらった音源もあったけど、毎熊さんご本人の演奏のほうが味があるということで、そちらを使わせていただきましたが、すごく良かったです」と満足気に語る。

金井監督は「ちなみに歌の歌詞は僕が書きました。でも、ヒロになった気持ちで書こうと思ったら難しくて。ヒロって歌は上手いし、才能がないわけじゃないけど、なかなか売れない感じということで、歌を考えるのにものすごく時間がかかりました」と苦笑する。

「『ちくわカレー』のシーンは、めちゃくちゃ悩みました(笑)」(金井)

メガホンをとった金井純一監督
メガホンをとった金井純一監督


毎熊のシーンといえば、一男とヒロが、ある理由で取っ組み合いの喧嘩をするシーンがとても印象に残っているという金井監督。「アクション担当の方についてもらって、最初に流れをやることになり『用意スタート!』となったら、けっこう本気のアクションになりました。毎熊さんは(小道具の)買い物袋を持っていたんですが、袋から醤油が転げ出て、何度やっても毎熊さんはそれを拾おうとするんです。毎熊さんに『なぜ醤油を拾うんですか?』と聞いたら『いや、大事なものですから』と言われて。僕の推理ですが、たぶん家庭用の醤油を奥さんに買ってこいと言われたのかなと」と言って、会場の笑いを誘った。

劇中では「ちくわカレー」が絶妙な小道具として登場し、涙を誘うシーンがある。そのカレーについて、金井監督は「もともとは “ジューシー、オイシイ!スパイシー”というスパイシーチキンカレーでしたが、もっとわかりやすいものがいいということで、村上さんから『ちくわカレーってどう?』と言われたんです」と言うと、村上も「最初はうどんのトッピングみたいなイメージでしたよね」とうなずく。実際に使われたのは、カットされたちくわを煮込んだものだ。

金井監督は「演出部から『本当にいいんですか?ちくわをのっけただけで?もっとオリジナリティを出したほうがいいですよ』と言われまして。1本まるごとで笑いをとるかと迷ったのですが、僕はいまのにしてよかったと思っています。どうでしたか?」と観客に尋ね、多数決をとることに。

『マイ・ダディ』は9月23日(金)より公開される
『マイ・ダディ』は9月23日(金)より公開される[c] 2021「マイ・ダディ」製作委員会

その結果、実際に使われたものが圧倒的に支持されたので、金井監督は「あそこはめちゃくちゃ悩みましたが、あれにして良かったです!」と安堵した。金井監督も村上プロデューサーも、実際に観た観客との交流を楽しみつつ、大盛況のままイベントは幕を閉じた。

取材・文/山崎 伸子

作品情報へ

関連作品

  • マイ・ダディ

    4.1
    663
    ムロツヨシ主演で、男手ひとつで育ててきた一人娘のために奔走する誠実な父親を描く
    Prime Video U-NEXT Hulu Netflix