スナフキンは作者の恋人だった!?『TOVE/トーベ』で知る、“実在”するムーミン谷の仲間たち

コラム

スナフキンは作者の恋人だった!?『TOVE/トーベ』で知る、“実在”するムーミン谷の仲間たち

ムーミンの仲間たちは実在した!?スナフキンやトゥーティッキのモデルとなった芸術家たち

ムーミンの物語の魅力の一つは、個性豊かなムーミン谷の仲間たちの存在だ。ファンタジー作品ではあるが、自分を取り巻く実在の人物たちをモデルにしたキャラクターを意識的に多く登場させた。

【写真を見る】ムーミンの親友で、自由に旅することをこよなく愛するスナフキン!そのモデルは…トーベの恋人?
【写真を見る】ムーミンの親友で、自由に旅することをこよなく愛するスナフキン!そのモデルは…トーベの恋人?画像はMoomin(@moominofficial)公式Instagramのスクリーンショット

例えば、孤独を愛する旅人であり、ムーミントロールの親友であるスナフキン。ムーミンのファンの間でも人気の高い彼は、トーベが20代の終わりに出会い、10年近く恋愛関係にあったアトス・ヴィルタネンがモデルと言われている。ヴィルタネンは政治家、哲学者、詩人、作家、ジャーナリストとして活躍したパワフルな人物で、一度も洗った痕跡のない古ぼけた帽子がトレードマーク。スナフキンの緑の帽子はこれに由来している。ヴィルタネンはトーベがムーミンを執筆するうえでの良き相談相手でもあり、破局後も、生涯交流が途絶えることはなかった。

スナフキンのモデルは、トーベと10年近く恋愛関係にあったアトス・ヴィルタネンという人物
スナフキンのモデルは、トーベと10年近く恋愛関係にあったアトス・ヴィルタネンという人物[c] 2020 Helsinki-filmi, all rights reserved


「たのしいムーミン一家」に登場し、常に一緒にいて離れることができない2人組、トフスランとビフスランは、トーベが1946年から47年にかけて激しく愛し合った既婚女性ヴィヴィカ・バンドラーとの関係にインスピレーションを得ている。トーベとヴィヴィカ、それぞれの頭文字「To」と「Vi」を織り込んで名づけられた。バンドラーはヘルシンキやフィンランドの演劇シーンに次々と新しい風を吹き込んだ舞台演出家。ヴィルタネンとの交際期間中だったにも関わらず、バンドラーと出会ったトーベは、たちまち情熱的な恋に落ちてしまう。同性愛が犯罪だった当時、2人はトフスランとビフスランと呼び合い、お互いにしか通じない言葉や暗号でメッセージを交わしていた。ムーミン物語のトフスランとビフスランが自分たちだけの秘密の言葉で話しているのは、ここから来ている。

舞台演出家のヴィヴィカ・バンドラーと出会い激しい恋に落ちる
舞台演出家のヴィヴィカ・バンドラーと出会い激しい恋に落ちる[c] 2020 Helsinki-filmi, all rights reserved

劇中、バンドラー(クリスタ・コソネン)の父親である市長から依頼を受け、トーベがヘルシンキ市庁舎のフレスコ画の大作「都会のパーティー」を制作するシーンも必見。パブリックな場所の絵のなかに、大胆にも女性の恋人バンドラーの姿を描き込み、2人の仲を知るヴィルタネン(シャンティ・ローニー)を心配させているエピソードも印象的だ。

“おしゃまさん”ことトゥーティッキ。トーベの生涯のパートナー、トゥーリッキ・ピエティラがモデル
“おしゃまさん”ことトゥーティッキ。トーベの生涯のパートナー、トゥーリッキ・ピエティラがモデル画像はMoomin(@moominofficial)公式Instagramのスクリーンショット

「ムーミン谷の冬」に登場し、冬眠から目覚めたムーミントロールをそっと導く女性、“おしゃまさん”ことトゥーティッキは、トーベの生涯のパートナーとなるトゥーリッキ・ピエティラがモデル。トーベが「かなり忠実な肖像」だと語っていたとおり、名前も外見もそっくり。劇中でも終盤にピエティラ(ヨアンナ・ハールッティ)が登場するが、ビジュアルがとても似ているので、ファンならすぐに分かるだろう。ピエティラは1963年にフィンランドの芸術家へ贈られる最高位の勲章、フィンランド獅子勲章プロ・フィンランディア・メダルを授与されたアーティスト。後にトーベのドキュメンタリー映画の素材となった映像を8mmカメラで撮影したり、ムーミン美術館や企画展などで展示されるムーミンの立体作品を制作したりと、あらゆる面でトーベとムーミンの世界に大きく関わった。

ムーミンママ、ムーミンパパのモデルはトーベの実の両親
ムーミンママ、ムーミンパパのモデルはトーベの実の両親画像はMoomin(@moominofficial)公式Instagramのスクリーンショット

そして、おっとりとした性格で包容力にあふれ、誰からも頼りにされる楽天家のムーミンママのモデルは、ヤンソン一家の実質的な稼ぎ手でもあったトーベの母シグネ。一方、家族を守る意識が強いものの、子どもっぽい面もあり、実はムーミンママのさりげないフォローに支えられているムーミンパパには、トーベの父ヴィクトルが投影されている。


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