清水崇と堀未央奈が語り合う、ホラー映画だけが放つ魅力「堂々と“好き”といえる世の中になるべき!」

インタビュー

清水崇と堀未央奈が語り合う、ホラー映画だけが放つ魅力「堂々と“好き”といえる世の中になるべき!」

「清水監督の撮影現場も覗いてみたい!」(堀)

――清水監督が、堀さんをホラー映画で起用するとしたら、どんな役をやってもらいたいですか?

清水「(間髪入れずに)サイコパス役ですね」

堀「え~…」

清水「言動の先がまったく読めない、ちょっとヤバい女の子。可愛くて、親しみやすいなと思って近づいたらとんでもないことになるという。そういう女性を演じてもらいたいです」

堀「でも私、ホラー映画が好きということもあって、周りから『サイコパス』って言われすぎていて(笑)。自分で自分のことが不安になっちゃいます」

清水「でも、そういう役はやってないよね?」

堀「それこそ、先日放送終了した不倫を題材にしたドラマ『サレタガワのブルー』でちょっとかじってはいるんですけど、ほかのドラマでは、死体の入ったスーツケースをただ引っ張っている不気味な女性の役もありましたね」

清水「もっとアクティブな方向にも行きたいんだ?」

堀「そうですね。犯罪に手を染めるシーンがなかったので、ホラー的な物足りなさはちょっとあるかもですね」

――堀さんは清水監督の作品に出るとしたら、どんな役をやってみたいですか?

堀「いや~、おこがましいです。ただ、清水監督の現場は覗いてみたいですね。ファンとしては、このシーンはどうやって作っているんだろう?って気になることがいっぱいあるので、その制作の過程を見てみたいです」

清水「なるほど。でも、現場を見ちゃうと、完成した映画を観た時に怖くなくなっちゃうんですよね(笑)」

堀「知らない方がいいこともあるんですね」

清水「現場では、怖い表情で『ウワ~』って唸っているお化け役の人をスタッフが持ち上げていたりするし、筋肉をものすごく使っているのに、そう見えないように工夫したりしているから(笑)」

堀「そういうのも好きです。可愛らしいし、愛おしく思えます」

「僕が悔しくなるような応募作品を期待しています!」(清水)

豪華な審査員たちが、新たな才能の挑戦を待ち受ける!
豪華な審査員たちが、新たな才能の挑戦を待ち受ける!

清水「1976年のオリジナルの『オーメン』は観てる?」

堀「はい、観ました」

清水「あの映画のラストシーンで、ホラー演出のわかり易い例があるよ。墓地に立つダミアン役の男の子が振り向いてニタリと悪魔の笑みを漏らすじゃないですか?あの不気味なシーンは、事前にあの子に『絶対に笑っちゃダメだよ』って言い聞かせておいて、彼が振り向いた時にカメラの周りでスタッフが変な顔をして笑わせるという手法で撮っているんです。その我慢している顔が、あの微妙な悪魔の笑みなんですよ」

堀「スゴい!普通に演出しても、子どもはあんな顔できないですものね」

清水「そういう演出の妙をリチャード・ドナー監督はいっぱいやっていて。ダミアンの母親がテラスから落ちる時の俯瞰ショットも、彼女が立って芝居をしている台をカメラからただ遠ざけているだけなんですよね。斬新だけど、CGや合成とは違う、画面処理では出せない効果的な描写や演出も大切です」

――今回の応募作のなかにはそういうギミックを駆使したものもあるかもしれませんね。お2人は応募作品のどんなところに注目しようと思っていますか?

堀「ホラーにはやはり新しさが大事だと思いますし、観たことがないような作品と出会えるのを楽しみにしています。その人の個性とか価値観、世界観といったいろいろなものがギュッと詰まった作品が応募されてくると思うんですよね。なので、なにを伝えたかったのかな?どこを観て欲しかったのかな?というところと演出のこだわりを、演じる側の視点とホラー映画ファンの目線の両方で見られたらいいなと思っています」

清水「今回集まった選考委員の方は、堀さんと同じようにホラーが大好きだし、たくさん観てきている人たちだと思うので、選考はけっこう厳しくなるような気がします。各位で思考や嗜好も違ってくるでしょうから捉え方や判断が分かれるかも。でも、基本的にはちょっとした描写でなにをやろうとしているのか察知したり、カメラの動き一つ、音楽のあて方一つで、あっ、そっちでなにか起こるのねって見破っちゃうような人たちばかりだと思いますから」

堀「あ~、そういうのは当ててしまいますね(笑)」

清水「バレちゃうから、それやらなきゃいいのに!って思うことが僕もけっこうある(笑)。でも、たまに映画を観る一般の方には、それくらい親切な方が良い場合もあるでしょうね。ちょっと前まで、スマホで観る『スマホラー』というプロジェクトに携わっていて。それは僕と僕が集めた13人の監督がそれぞれ5分ぐらいの短編を撮るものだったんですが、ホラーを普段撮っていない人はホラー映画もあまり観てないし、この仕掛けはバレるよっていうのがあって。だけど、別の部分でホラー思考が無いからこそ生まれる、まったく思いもよらない斬新な描写もあったり。逆にホラーが好きな人の作品は、どこかで観たような撮り方ばかりだったり。各々、好きと得意と真新しさとがバラバラだったりするからおもしろい」

堀「なるほど!」

清水「偶発性もありますね。待機していた俳優さんがたまたま見切れちゃって、意図してないところで急に映り込んでくると、それが怖かったりするんです」

堀「それは怖いです(笑)」

清水「そういう監督の元々の狙いではないことが功を奏すこともあるので、そういったところも含めて見たいし、なにかの真似だとしても、それがちゃんとその人のものになっている場合もあるから、そこもチェックしたいですね」

【写真を見る】クラシカルなドレスは、あの名作ホラーへのオマージュ!堀未央奈と清水監督の撮り下ろしショット
【写真を見る】クラシカルなドレスは、あの名作ホラーへのオマージュ!堀未央奈と清水監督の撮り下ろしショット撮影/黒羽政士


――清水監督は今回のオフィシャルコメントで「20年前のJホラー製作者にすがってはいけない」と言われていますが、選考委員長として、応募作にどのような期待を持っていらっしゃいますか。

清水「いち映画ファンとして、単純に優れたセンスの作品を観たいというのがまずあります。僕も作る側の人間だから、自分で自分の首を絞めているような気もしますけど(笑)、20年前のJホラー・ブームの時に出てきた僕のような監督にすがっているような業界じゃダメだろうという想いもあるし、新しい、若いセンスの監督たちはどんどん出てくるべきだと思っています。いまはプロとアマの垣根がどんどんなくなってきているし、誰でもスマホで動画が簡単に撮れちゃう。だからこそ技術の進歩ではない、人間の知恵とか個人のセンスが試されるような気がします。僕も“ウワ~、この手があったか?”って悔しくなるような作品を観たいですね」

「日本ホラー映画大賞」の作品応募受付は11月30日(火)までとなっており、大賞を発表する受賞式は12月に開催予定となっている。

取材・文/イソガイマサト

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