「おかえりモネ」で好演、若き演技派・清原果耶が魅せた10代の快進撃
『護られなかった者たちへ』では10代最後の感涙パフォーマンス!
さらに、『宇宙でいちばんあかるい屋根』(20)では隣の家に住む年上の大学生(伊藤健太郎)に恋心を芽生えさせつつ、血の繋がらない母親が新たな子供を授かったのを知って疎外感を感じる多感な少女・つばめをリリカルに演じた。屋上に現れる謎の老婆「星ばあ」を演じた桃井かおりとのフレンドリーなやりとり、ほかの作品ではあまり見られない彼女の無邪気な笑顔に魅せられた人も多いはずだ。
雫井脩介の同名小説を映画化した『望み』(20)と、『婚前特急』(11)の監督・前田弘二と脚本・高田亮が再タッグを組んだ『まともじゃないのは君も一緒』(21)でも清原は彼女自身と同年代の役柄に挑戦し、まったく違うキャラクターを演じ分けているのが興味深い。
前者では自分の兄が殺人事件に関わっているかもしれないと知って、兄のことより自分の未来を心配するごくごく一般的な女子高生に命を浮き込んだ清原は、堤幸彦監督から「怖いくらい巧い」と絶賛されたほど。後者ではガラリと変わり、恋愛経験はないものの恋愛雑学は豊富な、自分のことを普通だと思っている“普通じゃない”予備校生を快演! 成田凌が演じる“コミュ力”ゼロの予備校教師とのちょっぴり変わった会話の数々で観る者を引き込み、唯一無二とも言えるこのユニークな恋愛ドラマのヒロインになりきっていたのは新鮮で面白かった。
とはいえ、これまでのキャリアを俯瞰してみると、清原果耶がどちらかと言うと地に足のついた真面目な役柄を数多く演じてきたことがよく分かる。ほかの同年代の女優たちと違ってキラキラ映画にも出ていないし、ホラーやコメディなどのジャンル映画ともいまのところ無縁な稀有な存在である。
そんな清原果耶のパブリック・イメージを思いがけない形で劇中のキャラクターに反映させたのが、彼女の最新出演映画『護られなかった者たちへ』だ。本作は中山七里の同名ミステリーを『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17)の主演・佐藤健と瀬々敬久監督の再タッグ、阿部寛の共演で映画化したもの。東日本大震災から10年後の仙台を舞台に、佐藤が演じる凄惨な連続殺人事件の容疑者・利根と阿部が扮した彼を追う刑事・苫篠との攻防を見つめながら、事件の裏に隠された真実のドラマを炙り出していく展開だが、清原はここでも保険福祉センターで働く実年齢より上の設定のケースワーカーの女性・円山をまっすぐに演じている。
地域の住民に優しく話しかけたり、生活が困難な家庭に足繁く通う円山は、『おかえりモネ』の“モネ”とも重なる堅実な女性でありながら、本作の鍵を握る重要なキャラクター。映画を観たときの衝撃と感動が薄れるのでここでは多くは書けないが、クライマックスで見せる清原の迫真は彼女史上最高レベル!演技派の佐藤健や瀬々敬久監督からも高く評価された清原果耶、10代最後の感涙パフォーマンスをぜひスクリーンで目撃して欲しい。
文/イソガイマサト