林遣都と小松菜奈が明かす、“虫”に悩み、“虫”に救われた甘いラブストーリー完成秘話
「人のぬくもりっていいなと改めて感じました」(林)
――それについては、どう解釈しているのでしょうか?
小松「ただ必然だった、と思うんです。冒頭、バス停で倒れた高坂を診療所に連れて行ったあとの佐薙のナレーションに、『私と同じ匂いがする』という言葉があります。その言葉からも、出会うべくして出会った2人なのかなと感じました。自分と同じように相手もコンプレックスを持っていて、佐薙が孤独を打ち明けた時、高坂はわかってくれた。そういう時って、この人しかいないかもって思ってしまうものだから…」
林「確かに。高坂としては、佐薙がズカズカと踏み込んできて、絶対に入ってきてほしくない自分の領域に踏み込まれて、最初は『なんなんだこの子は!』っていう気持ちだったと思うんです。でも、お互い似たような境遇で、気づいたら恋心が芽生えていた。その気持ちが確かなものになったと感じたのは、重大な決断をする前に佐薙が家に押しかけてきて、肌が触れ合った瞬間です。柿本監督が『肌と肌が触れ合う、温もりを撮りたい。表現として大事にしたい』と追加したシーンで、もともと台本にはありませんでした。その時、人のぬくもりっていいなと改めて感じました」
――“虫”は恋する人たちに試練を与える存在ですが、佐薙は“虫”を愛おしいと思っていたようにも映ります。
小松「佐薙自身がずっと孤独な人生を送ってきたこともあって、“虫”が惹かれ合って、結合して、“恋”に落ちる。そういうロマンチックなところに惹かれていたと思うんです。でも、考え方によっては、佐薙にそう思わせたのも、お守りのようにキーホルダーとしていつも持たせていたのも、“虫”の影響かもしれなくて。この物語は、ぜんぶ“虫”のせいにできてしまうので、お芝居的には救いでもありました。セリフに関しても、甘いセリフがたくさんあって、ちょっと言いにくいなって思うところもあったので」
「“虫”のせいなんだと受け入れてしまう感覚は、この映画でしか感じられないこと」(小松)
――言いにくいセリフというのは?
小松「クライマックスの湖のシーンもそうですが、高坂のことを『きみ』って呼ぶこととか、そもそも佐薙は、発言が女の子らしいので、そういうセリフに正直抵抗はありました。でも、これもぜんぶ“虫”のせいかも!って考えたら言えちゃう自分がいて(笑)。“虫”のせいにしたら腑に落ちてしまう、とても不思議な感じでした」
林「僕は、2人が出会って惹かれ合う、その展開のスピードについていくのが大変でした。演じながら、つい自分の主観で考えたり囚われてしまったりして。頭ではわかっていても体がついていかないこともありました。でも、小松さんと一緒で、“虫”がいるからこうやって進んでいくんだって、自分で自分に言い聞かせていましたね」
小松「“虫”がそうさせているんだ、と受け入れてしまう感覚は、この映画でしか感じられないこと。貴重な経験だったと思います」
取材・文/新谷里映