ディズニーの新ヒロイン『ミラベルと魔法だらけの家』、SNSを題材にしたブロードウェイ発映画『ディア・エヴァン・ハンセン』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、“普通の女の子”の特別さに気付かされるディズニー・ミュージカル最新作、一人の少年の“思いやりでついた嘘”について描くブロードウェイ作品の劇場版、三浦透子、倉悠貴ら気鋭の若手が集結し、愛を求める若者を演じる青春群像劇の、考えさせられる3本!
優しさ、家族への愛も特別なギフト…『ミラベルと魔法だらけの家』(公開中)
ディズニーの新ヒロインは魔法にあふれる世界で、唯一魔法が使えない普通の女の子、ミラベル。そんな彼女が自分の運命に立ち向かい、新しい道を切り開く勇敢な姿はディズニーヒロインらしさを感じると同時に、歴代ヒロインの中でもかなりの親近感を抱かせる。特別なギフト(才能)を持たないミラベルは、家族、特におばあちゃんの期待に応えられずに、寂しく苦しい思いを抱くことも。そんな彼女が、家族に訪れた危機に、持ち前の勇気と優しさで立ち向かっていく。誰にも負けない愛と勇気と優しさと知恵こそが、ミラベルに与えられた特別なギフトなのだ。リン=マニュエル・ミランダが手がけるラテン系楽曲に心躍る本作では、ミラベルの声を務めた斎藤瑠希にも注目。物語に引き込む歌声、表現力に圧倒される!(ライター・タナカシノブ)
意外なほど身近な要素を感じ取れる…『ディア・エヴァン・ハンセン』(公開中)
ブロードウェイの人気ミュージカルを映画化する流れはよくあるパターンだが、これはかなり異色の一本。主人公は高校生エヴァンで、孤独に悩む彼がセラピーのために自分宛ての手紙を書き、その手紙を持ち去った同級生コナーが自殺してしまう。そこからエヴァンとコナーの家族との関係、学校での様々なドラマへと発展。青春映画として感情移入させ、胸を締めつける物語が、ミュージカルとしては新鮮だ。作詞作曲は『ラ・ラ・ランド』(16)、『グレイテスト・ショーマン』(18)のコンビなので、各ナンバーはエモーショナルで、一度耳にしただけで記憶に残る。基本的に登場人物の心の叫びが歌に込められ、オリジナルのブロードウェイ版から続いてエヴァン役を任されたベン・プラットらキャストの熱唱のほとんどは、ライブ録音した音源を使用。観ているこちらにストレートに迫ってくる。人と触れあえない寂しさや、SNSでの訴えや炎上など、いまの社会を生きる我々にとっては、意外なほど身近な要素を感じ取れるはず。(映画ライター・斉藤博昭)
身に覚えのある痛みとしてザクッと心に斬り込まれる…『スパゲティコード・ラブ』(公開中)
アーティストのMVや、CMを手掛けて来た映像クリエイター、丸山健志による長編デビュー作。『五億円のじんせい』(19)の蛭田直美が脚本を手掛ける。現代の東京を舞台に、自分の居場所や存在意義、誰かからの承認や愛情を求めてさまよう13人の若者の姿を描きだす。かなり多めの登場人物だが、互いの物語を上手く交差させ、対話させ、衝突させることで、各々の気持ちや心情や状況を、自然と浮かび上がらせていくのが上手い。フードデリバリー配達員やSNS友だち5000人など、いまどきな設定や状況を織り交ぜながら、いつの時代も変わることのない普遍的な若者のあがき、焦燥などが、大人にも身に覚えのある痛みとしてザクッと心に斬り込まれる。撮影監督、神戸千木が捉えたいまの東京が妙に新鮮でときめきを覚えつつ、一瞬フッと異世界に迷い込んだような感覚――デジタルネイティブなZ世代の感覚に触れた気にもさせてくれる、なかなかに魅力的なデビュー作だ。過剰な演出を控え、無言の表情や親密な会話で語らせた、そして、それに応えた13人の若手俳優も、みないい。(映画ライター・折田千鶴子)
週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/サンクレイオ翼