現役フラガールたちが『フラ・フラダンス』を鑑賞!震災とコロナ禍を越えて繋がれた、“絆”のバトン

インタビュー

現役フラガールたちが『フラ・フラダンス』を鑑賞!震災とコロナ禍を越えて繋がれた、“絆”のバトン

「コロナ禍では、震災を乗り越えた先輩方をどうしたら超えられるのか、 すごく考えました」(ラウレア美咲)

フラ・フラダンス』は、東日本大震災で特に大きな被害を受けた岩手県、宮城県、福島県、それぞれを舞台にしたアニメーションを制作する「ずっとおうえん。プロジェクト2011+10…」のうちの1本。まさに震災直後にフラガールになったラウレア美咲、キアヌ咲樹は新人だった当時のことを振り返る。

新入社員たちの葛藤は、映画内でも丹念に描かれている
新入社員たちの葛藤は、映画内でも丹念に描かれている[c]BNP, FUJITV/おしゃれサロンなつなぎ

ラウレア美咲が入社したのは、震災の翌年の2012年。いわき市復興支援のため、全国26都道府県と韓国・ソウルを含む125か所、274公演を行った「フラガール全国きずなキャラバン」が終了し、ハワイアンズが再オープンするタイミングだったという。「キャラバンの影響もあって、たった1年前に震災があったのだろうかと思うほど大勢のお客さまがハワイアンズに来てくださって。私たち新人は、満員の観客席を前にした、盛大でエネルギーに満ちたショーのなかに、体当たりで飛び込んでいくしかなかったんです」。

先述したように、当時の先輩たちが「とりわけ怖かった」理由が、震災で傷ついたハワイアンズを立て直そうとした彼女たちの熱量の表れだったことは想像に難くない。キアヌ咲樹も大いに頷く。「先輩方も震災を乗り越えていくため、気持ちを強く持っていたのだと思います。そんな立ち振る舞いが本当に勉強になったので、私たちも新人ながら真似できるところは真似をして、いいところをつかんで自分も成長していきたいという気持ちでなんとか食い下がっていました」。


ハワイの雰囲気がゲストを温かに出迎える
ハワイの雰囲気がゲストを温かに出迎える撮影/黒羽 政士

そのような努力の甲斐もあり、ハワイアンズは震災前の活気を取り戻し、福島県の“復興”のシンボルとも言える存在になっていった。しかし、震災から10年を目前に控えた2020年。思いもよらぬコロナ禍で、営業形態上、ハワイアンズは一時閉館を余儀なくされてしまう。昨年は2019年との対比で来場者が約30パーセントにまで減少し、かつてない過酷な状況に直面した。

ラウレア美咲は10年前を知る者として、キャプテンとして、この事態のなかでも皆を率いて鼓舞しなければならなかった。「震災時の先輩方は、一時はホームを失ったけれど、外に出ていくことを選択されました。それに対して私たちは、ホームはあるのにお客さまをお迎えすることができない。もちろん外にも出ていけません。その状況下で、どうしたらあの時の先輩方を超えられるのか、 会社に貢献できるのかをすごく考えました」。

映画公開に合わせて、ひまわりの装飾が施されたステージは必見!
映画公開に合わせて、ひまわりの装飾が施されたステージは必見!撮影/黒羽 政士

コロナ禍で閉館していた間も、密を避け、全体をA班とB班に分かれたうえで練習は継続されていたそうだ。しかし、ステージに立つことができず、慣れ親しんだチームメイトらとも半分ずつにされた状況のなかで、新人たちは先の見えない不安を抱えていたようだ。「やはり、ダンサーにとって最大のモチベーションはお客さまの反応です。キャプテンとして、そういった実感を得ることができない新人たちの気持ちを高めていく方法も常に探していましたが、私にそれができているのかずっと不安でした」。そこでラウレア美咲やキアヌ咲樹は営業の社員たちと相談して、フラガールたちの元気な姿をYouTubeで届けるというアイディアを考えて実行するなど、これまでとは違った発信の形も模索していった。

「限られた条件のなかでも、お客さまとの繋がりを強く感じました」(加藤・三井)

4人で仲良くポーズ!
4人で仲良くポーズ!撮影/黒羽 政士

そんな状況下で今年4月、57期生が入社する。営業再開後も入場制限があるため客席はまばらで、それまで1時間あったショーも半分にまで短縮されていた。筆者は、夢みていたステージの姿と違っていたことについて新人たちが複雑な心情を抱えているだろうと考え、57期生の2人に尋ねた。しかし、返ってきた答えは意外ともいえるものだった。

加藤は今年が2度目の挑戦となったため、「不安で不安で仕方がなかった」という。「だからこそ、」と彼女は続ける。「いまこうして入社することができて、お客さまの数が少なくても毎日ステージに立てていること自体が本当に幸せで。8月3日のデビューの日は満席に近い人数のお客さまが来てくださったんですが、たとえお客さまが少なくても、その分皆さまと目線を合わせられる回数も増える。そういった部分に目を向けると、その時々の限られた条件のなかで自分にできることを考えながら、これからも踊っていこうという気持ちになりました」。

ハワイアンズのステージは、観客とダンサーが一体となって作り上げている
ハワイアンズのステージは、観客とダンサーが一体となって作り上げている[c]BNP, FUJITV/おしゃれサロンなつなぎ

三井も同じように、「お客さまとの繋がりを強く感じた」という。「お客さまが沢山いらっしゃった方がもっと盛り上がるのかなと思った時もありますが、人数が少なくてもお客さまと一つになれるステージが作れるということが分かったんです。なので、これからもお客さまとの繋がりを大切にしたステージを目指していけたらいいなと思っています」と、嬉しそうに語ってくれた。

そんな後輩ダンサーたちを、キャプテンとしてラウレア美咲が優しい眼差しで見つめる。「震災当時の先輩方がいらっしゃったから、いまもハワイアンズがありますし、私たちも幸せなことにステージに立てています。先輩として、私たちも後輩たちにそう感じてもらえる環境作りをして、次の世代へと繋いでいきたいですね」。

ラウレア美咲は、後輩たちへの想いを満面の笑みで語ってくれた
ラウレア美咲は、後輩たちへの想いを満面の笑みで語ってくれた撮影/黒羽 政士

そういった努力を積み重ねた結果、2021年の来場者数は、直近の11月では2019年比で60パーセントまで盛り返しているそうだ。困難な状況から何度も息を吹き返してきたハワイアンズと、笑顔の裏にある不屈の精神と強い絆で結ばれたフラガールたち。『フラ・フラダンス』にもしっかりと焼き付けられたエネルギーを実感した今回の取材で、この「東北のハワイ」がなぜ多くの人を魅了し、元気にしてきたのか、そのパワーの源に触れたように思えた。

ラウレア美咲は、「まだまだ油断のできない状態が続いていますが、」と前置きしたうえで、「“フラガール”という職業を映画を観た方に知っていただけるのもすごく嬉しいですし、『フラ・フラダンス』をきっかけにハワイアンズに実際に足を運んでもらったり、幸せの絆が全国で繋がるといいな、と願っています」と話し、太陽のような満面の笑みで結んでくれた。

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撮影/黒羽 政士

取材・文/イソガイ マサト


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