【今週の☆☆☆】最凶ヴィランとの戦いを描く『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』、神尾楓珠×山田杏奈主演『彼女が好きなものは』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、“スパイダーマンの宿敵”ヴェノムが最強の怪物と相まみえるアクション、腐女子とゲイという秘密を抱える高校生が、“普通の男女”として付きあうこととなる青春物語、児童相談所が抱える問題や、虐待の現場で起きていることを生々しく描くヒューマンドラマの、バリエーション豊かな3本!
さらにスケールアップした異形のダークヒーローの活躍に注目…『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(公開中)
マーベルコミックスのヒーロー「スパイダーマン」の敵役ながら、高い人気を誇り2018年に単独映画化された『ヴェノム』の続編。地球外から来た寄生生命体、シンビオートのヴェノムと共生し、ヒーロー的な活動を始めたエディ・ブロック(トム・ハーディ)。本業のジャーナリストとして連続殺人鬼で死刑囚のクレタス・キャサディ(ウディ・ハレルソン)の元へ向かうが、取材中にクレタスに腕を噛まれてしまう。エディの血を身体に取り込んだクレタスは、異形の怪物カーネイジとして覚醒。離れ離れとなった恋人を探し大量殺戮を行うカーネイジと、それを阻止するヴェノムの激突が描かれる。狂気と殺人衝動を解放したカーネイジと理性的な共生関係を結ぶヴェノムという、自在に身体形状が変化するシンビオート同士の対決は、全作以上の迫力に仕上がっている。一方で、シンビオートとエディの「ケンカするほど仲がいい」的な関係や、大量殺人鬼のタガが外れた恋愛感など、ドラマ的な見所もアップ。コメディあり、ダークヒーロー的な味わいありの異質のヒーロー映画として楽しめる仕上がりとなっている。(ライター・石井誠)
誰の視点にも肩入れしない、親密で公正なアプローチ…『彼女が好きなものは』(公開中)
『ひらいて』(21)に続き、山田杏奈が破格の表情と存在感で魅せる。神尾楓珠の、鋭くセンシティブな感じもいい。ドラマ「腐女子、うっかりゲイに告る。」も良かったが、こちらも、かなりいい。同じ原作で後出しは苦戦かと思いきや、本作ならではの味わいと世界観を見事に構築していて、ジンジン泣けた!ゲイであることを隠す高校生の純と、BL好きを秘密にする級友の紗枝。BL好きを純に目撃されて急接近したことで、紗枝が純のセクシャリティを知らずに本気で恋して…。高校生なんて人生で最大に、自意識と自己愛と定まらぬアイデンティティで、頭も心もパンパンな状態。その辺りの描写も上手く、観ていて息苦しくなる。そんな時期の潔癖少年少女も多いなか、ゲイであると思わぬ形で知られた純、その友人らの反応は――。悪人はいない。でも、無知という暴力、無意識の偏見、常にマジョリティ側でいたい臆病さetc.…を、ハラハラ、時に痛くさせながら目の前で物語を展開させる。誰の視点にも肩入れしない、親密で公正なアプローチがいい。多様性というお題目だけではない、人としてどういう自分で居たいかを考えさせてくれる、リアルな自分事に誰もが捉えるだろう感動の青春ドラマだ。(映画ライター・折田千鶴子)
主人公たちの苦悩と葛藤を浮き彫りに…『189』(公開中)
虐待を受けている子どもたちを“いちはやく”助けるために設置された、児童相談所虐待対応ダイヤル「189」。そのナンバーをタイトルに掲げた中山優馬の最新主演作は、実際の事件をモチーフに、小さな命を救うために奔走する新人児童福祉司の姿をリアルに描いた社会派ムービーだ。現実の社会でも毎日のように報道される児童虐待。本作はその実体を生々しく炙りだし、社会のシステムによって虐待されている子どもたちを簡単には救えない主人公たちの苦悩と葛藤を浮き彫りにしていく。
さらに児相をめぐる様々な問題点も暴きだすが、それらが鋭角に迫ってくるのは、中山が生々しい息吹きで新人児童福祉司を体現しているから。虐待されている少女を演じた天才少女、太田結乃の涙の迫真、虐待する鬼畜の父に扮した吉沢悠の狂気とおぞましさもスゴい!この映画を観てなにを思うのか?子どもたちを救うためには、一人でも多くの人がこの現実を知ることから始めなければいけない。(ライター・イソガイマサト)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/サンクレイオ翼