スマートなスーツはジェントルマンの証…「キングスマン」「007」など話題作からスーツの着こなしを考察する
公開中の『キングスマン:ファースト・エージェント』では、世界最強のスパイ組織“キングスマン”の誕生秘話が描かれる。組織の表向きは高級紳士服テーラーという設定のため、今回も美しいウィンドウ・ディスプレイやラグジュアリーな英国紳士服が画面を彩る。そこで、「007」シリーズ、『裏切りのサーカス』(11)、「メン・イン・ブラック」シリーズ、『ラ・ラ・ランド』(16)から「キングスマン」シリーズまで映画の時代と世界観にマッチしたアイコニックなスーツをピックアップしてみた。
英国映画の金字塔!時代の変遷も辿れる「007」シリーズ
1960年代から2020年代までのスーツの変遷が楽しめる「007」シリーズ。第3作『007/ゴールドフィンガー』(64)でショーン・コネリー演じるジェームズ・ボンドは、ロンドンの高級紳士服街、サヴィル・ロウで紳士服店を営むアンソニー・シンクレアが裁断したグレンチェックの3ピーススーツで登場。ややゆったりとしたフィット感と6つボタンのベストはいかにも60年代風だが、同作の冒頭でボンドが着ているアイボリーホワイトのディナージャケットに襟元のバラというコーデは、のちに6代目ボンドのダニエル・クレイグが引き継いだ、まさにアイコニックなボンド・スーツの典型だ。
今年引退となったクレイグ版ボンドは、『007 慰めの報酬』(08)以降の4作品でトム・フォードが提供した少しタイトなジャケットを羽織り、“スーツは体で着ろ”と言わんばかりにマッチョなボンドをアピール。その代表が、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(21)でMI6に乗り込むボンドが着る、ウエストの位置が高いプリンス・オブ・ウェールズ・チェックのスーツ&濃紺のタイ&タイピンだ。
ポール・スミスならではのクラシックなデザイン『裏切りのサーカス』
パンクが花開いた1970年代のロンドンが舞台の『裏切りのサーカス』に登場するのは、スモーキーカラーの3ピースやコート、タイなど。大人のメンズは流行に左右されないベーシックな装いを愛したということかも知れない。なにしろ、服をデザインしたポール・スミスは、同じ70年代にイングランドのノッティンガムに1号店を出店した時代の生き字引。コリン・ファースが着る茶色のウールスーツにえんじ色のタイ、スカーフ、スモーキーグリーンの3ピースにブルーのタイ、ゲイリー・オールドマンが着る1950年代風のダークスーツなどは、よく見ると、いまもポール・スミスの店頭で見かけるようなクラシックなデザインだ。服が役者の体になじんで見えるのはファースとオールドマンがどちらもポール・スミスの上顧客だからだろうか。