スマートなスーツはジェントルマンの証…「キングスマン」「007」など話題作からスーツの着こなしを考察する

コラム

スマートなスーツはジェントルマンの証…「キングスマン」「007」など話題作からスーツの着こなしを考察する

アクションを映えさせる“黒”…「メン・イン・ブラック」シリーズ

シンプルだからこそ、目標である宇宙人やエージェントの動きがより引き立つ(『メン・イン・ブラック』)
シンプルだからこそ、目標である宇宙人やエージェントの動きがより引き立つ(『メン・イン・ブラック』)写真:EVERETT/アフロ

時代を超越する色、ブラック。それをタイトルにした「メン・イン・ブラック」シリーズは、地球上に存在する宇宙人を監視する秘密組織の暗躍ぶりを描いてきたが、こうしてスーツでくくってみると敵がドロドロなだけに、エージェントはアクション映えする黒でまとめるという作品のコンセプトがわかる。

性別問わず基本は同じデザインだが、襟元や裾に少しずつ違いがつけられている(『メン・イン・ブラック:インターナショナル』)
性別問わず基本は同じデザインだが、襟元や裾に少しずつ違いがつけられている(『メン・イン・ブラック:インターナショナル』)写真:EVERETT/アフロ

第1作『メン・イン・ブラック』(97)で“MIB”にスカウトされたウィル・スミス扮するニューヨーク市警のジェームズは、本来はおしゃれなラッパーという設定なので、“MIB”指定のブラックスーツの着こなしも自信満々。トミー・リー・ジョーンズ扮する先輩捜査官“K”に対して「俺とあんたの違いはスーツの着こなしさ」と言い放つ。ブラックスーツをアップデートしたのは、またもやポール・スミス。シリーズ第4作『メン・イン・ブラック:インターナショナル』(19)ではクリス・ヘムズワースとテッサ・トンプソンのために、躍動的なうえにジェンダーフリーなスーツ&タイをデザイン。黒はなににでも対応できることを証明している。

カジュアルスーツの着こなしを学ぶ『ラ・ラ・ランド』

セバスチャンのスーツとミアのドレスはいつも相性抜群!(『ラ・ラ・ランド』)
セバスチャンのスーツとミアのドレスはいつも相性抜群!(『ラ・ラ・ランド』)写真:EVERETT/アフロ

ラ・ラ・ランド』は、ハリウッドのゴールデンエイジを彩るミュージカルへのオマージュが画面からあふれる作品。テイストは1940年代。エマ・ストーン演じるヒロイン、ミアが常時カラフルなドレスで通すのにあわせて、ライアン・ゴズリング扮するセバスチャンもレトロなカジュアルスーツを取っ替え引っ替えして、画面を視覚的に盛り上げてくれる。オレンジのホルターネックドレスを着たミアと散歩する時は、茶色のジャケットを腕にかけて黄色いタイをさりげなくアピールし、ミアがグリーンの時は薄茶のジャケットに濃い茶色のタイ、そして、怒濤のクライマックスでミアが見つめるステージ上から、ワインレッドの3ピーススーツで無言の別れを告げる。

テーラーだからこそのこだわりが光る「キングスマン」シリーズ

“キングスマン”のユニフォームであるスーツは防弾仕様になっているなど、機能性にもすぐれている(『キングスマン』)
“キングスマン”のユニフォームであるスーツは防弾仕様になっているなど、機能性にもすぐれている(『キングスマン』)写真:EVERETT/アフロ

キングスマン」で、ベテランエージェントのコリン・ファース演じるハリーが身につけるのは、いつも決まってダブルブレストのスーツにレジメンタルタイ。ジャケットの上から2番目のボタンあたりでウエストがキュッと締まっているところがポイントだ。一方、ハリーにスカウトされたタロン・エガートン扮するエグジーはフレッド・ペリーが大好きなストリート系だったが、いざスパイとして働きだすとハリーと同じダブルブレスト&レジメンタルタイにチェンジ。ただ、スーツの色をネイビーブルーにして若さを強調している。


エグジーが鮮やかなオレンジのディナージャケットを着こなすまでに成長(『キングスマン:ゴールデン・サークル』)
エグジーが鮮やかなオレンジのディナージャケットを着こなすまでに成長(『キングスマン:ゴールデン・サークル』)写真:EVERETT/アフロ

そんなエグジーも第2作『キングスマン:ゴールデン・サークル』(17)では同じコーデでハリーと拮抗するようになり、王女との会食シーンではオレンジ色のディナージャケットを堂々と着こなすまでに成長。素材のベルベットは今年のトレンドとして注目の的だ。

ジェントルマンの証であるスーツが輝くこれらの作品は、ジャンルは様々でもファッションムービーとして楽しめるものばかり。待望のシリーズ第3弾『キングスマン:ファースト・エージェント』の舞台は1910年代。組織の生みの親を演じるレイフ・ファインズが着こなすクラシック・ファッションに注目しながら映画を堪能したい。

文/清藤秀人

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