お祝いムードを盛り上げる!ハレの日にぴったりの“ごちそう”が出てくる映画7選
宴席料理大会で繰り出されるご馳走の数々にクギ付けに!…『祝宴!シェフ』
台湾映画『祝宴!シェフ』(13)は、おもてなし料理の「神」と呼ばれたシェフを父に持つ料理下手のヒロインが、父亡き後に借金返済のため料理大会に出場するドタバタ奮闘劇。やがて宴席料理のすばらしさに目覚め、人生を再スタートさせようとする。トマトの卵炒め、焼きビーフン、レンコンのはさみ揚げといった家庭の食卓にのぼるような料理にはじまり、「鶏と豚とスッポンのスープ」「ウナギの野菜詰め蒸し」「田ウナギ炒めもの」「千切り干貝と筍の炒め物」「肉と野菜のスープ鍋」など、宴席料理大会で勝負をかける料理の数々はどれもこれも美味しそう。特に、鶏と豚の詰め物にスッポンのスープを回しかける瞬間は、思わずゴクリ!笑いながらパワーをもらえる、楽しい料理コメディだ。
とにかくゴージャス!歴史に残る3日3晩の大饗宴…『宮廷料理人ヴァテール』
ルイ14世を招いて催された、歴史に残る3日3晩の大饗宴を指揮した天才料理人ヴァテール(ジェラール・ドパルデュー)の奮闘と、彼が自害するまでを描いた大スペクタクル・ドラマ『宮廷料理人ヴァテール』(00)。料理だけでなく、いわゆる“祝宴プロデューサー”的な役割を務めたヴァテールは、料理のコンセプトを第一日目は「太陽の栄光」、二日目は「水の饗宴」、そして三日目を「氷の饗宴」として、膨大な食材と大勢が働く現場をさばいていく。そこに美しき女官(ユマ・サーマン)をめぐる愛と策謀が渦巻き…。とにかく豪華すぎて一皿ごとに何がどう料理されているのか分からないものの、ひとつ、ヴァテールが生み出したとされる“クレーム・シャンティイ(ホイップクリーム)”が、彼の機転によって生み出されたことが分かるエピソードも。いつの時代も、権力者に振り回される庶民、そして高潔な人物ほどその犠牲になる、というやるせない思いも抱かせる。
目にも麗しい、至福のご馳走が心まで豊かにしてくれる…『バベットの晩餐会』
最後は、古今東西、長らく“傑作お料理映画”No.1の座をいまだ譲らないことに、誰も異論はないであろう『バベットの晩餐会』(87)。時代は19世紀後半。デンマークの辺境の村で牧師の父と暮らす老姉妹のもとに、家族を喪いフランスから亡命してきた女性バベットが身を寄せる。やがて父が亡くなり、村の人々が信仰心を失っていくのを憂えた姉妹は、ささやかな晩餐会を開くことを思いつく。家政婦として働くバベットは、晩餐会の料理を作らせてくれと申し出る――。
「ウミガメのスープ」「ウズラとフォアグラのパイ詰め石棺風」「キャビアのデミドフ風ブリニ(パンケーキ)添え」「クグロフ型のサヴァラン ラム酒風味」など。未知の食材を口にすることすら恐れていた姉も、次第に周囲の「美味しい!」うっとり顔に動かされ、口にすると――。バベットが作り出した至福の美味なる料理が、晩餐会にやって来た人々の頑なな心を解きほぐし、いがみ合う心もほどいていく。もう湯気だけで、ゴクッと唾を飲み込んでしまうほど。実はバベットはパリの有名シェフで、宝くじで当たった1万フランをすべて晩餐会に費やしていた、という豪華さ。辺境の地を映す寒々しくも詩情が流れる風景と、頑なだった人間関係に温もりと優しさを料理が吹き込んでいく、奇跡のような静かで深みのある時間。ジワッとした後に心が澄んでいくような不思議な感覚を抱かせる、数年ごとに見返したい人間ドラマだ。
どの作品も、口にした時の美味しさや感動まで伝わってくるような料理の数々が登場!さらに料理を取り巻く人間模様に笑ったり泣いたりと、味わいは豊潤。目も心も奪われるご馳走ムービーを、じっくりと堪能してほしい。
文/折田千鶴子