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『シン・ウルトラマン』イヤー開幕!樋口真嗣が語る、庵野秀明とのタッグと「ウルトラマン」と歩んだ道のり

インタビュー

『シン・ウルトラマン』イヤー開幕!樋口真嗣が語る、庵野秀明とのタッグと「ウルトラマン」と歩んだ道のり

「『シン・ウルトラマン』は僕がいまやれる、先人たちへの恩返し」

一般的にもっとも知られた、Cタイプのマスクのウルトラマン
一般的にもっとも知られた、Cタイプのマスクのウルトラマン[c]円谷プロ ※『ウルトラマン』は、TSUBURAYA IMAGINATIONで配信中!

――令和の時代に『シン・ウルトラマン』を制作していくうえで、どのような課題に直面しましたか。

「当時の『ウルトラマン』の世界観とキャラクターたちを、現代社会に落とし込まなくてはいけなかったので、そこには摩擦がありました。1966年当時からは科学が大きく進歩していますから、過去と現代を紐づけるにあたり本をたくさん読んでみたり、専門家の方に説明してもらったりもしました。本作の狙いは、初代をそのままリメイクするというだけではなかったので、庵野からはハードルの高い台本が上がってきました。お芝居や演出でどう具体化するかということに関しては、『シン・ゴジラ』の時よりも難しかったです。ゴジラは巨大生物1体ですが、こっちは複数の巨大生物たちに加えて、銀色の巨人ですから(笑)。『ウルトラマン』におけるリアリティってなんだろうかと考えるところから始まりました」


【写真を見る】「ウルトラマン」から『シン・ウルトラマン』へ…人気怪獣と共に振り返る、銀色の巨人の55年
【写真を見る】「ウルトラマン」から『シン・ウルトラマン』へ…人気怪獣と共に振り返る、銀色の巨人の55年[c]2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 [c]円谷プロ

――ビジュアル面では、これまで発表されている映像のなかでも、初代を踏襲しつつもかつてないウルトラマン像が話題になっています。

「本作では、(初代ウルトラマンのデザインを手掛けた)成田亨さんが、当初描かれたデザインに忠実であろうと試みています。僕は成田さんが亡くなられる直前に別のプロジェクトでご一緒させていただいたので、成田さんの初期デザインに立ち返ることは僕からのご恩返しというような意味もあります。いま残っている資料やプロップをすべてかき集め、参考にしながら作っていきました」

――ウルトラマンがスペシウム光線を発する画も、昔ながらの表現にこだわられた感じですね。

「『ウルトラマン』で光学作画を担当されていた飯塚定雄さんは、いまでも現役で『ウルトラ』シリーズや『仮面ライダー』シリーズなどで光線を描いているぐらいお元気なので、昔取った杵柄ということでお願いしました。しかも昔と同じやり方で。ちょっとへそ曲がりな頑固じいさんでしたが(笑)、すごい枚数を描いてくれました」

――最後に、『シン・ウルトラマン』に備えたい読者に向けて、ぜひ観ておいてほしい初代「ウルトラマン」のエピソードをいくつか教えて下さい。

初代ウルトラマンのデザインを手掛けた成田亨への敬意を口にする
初代ウルトラマンのデザインを手掛けた成田亨への敬意を口にする撮影/河内彩

「それを僕が言ってしまうと、みんな勘ぐりますよね(苦笑)。『ウルトラマン』のすばらしさは、作劇の振り幅にこそあると思います。そういう意味で3本選ぶならば、まずは脳波怪獣ギャンゴが出てくる第11話『宇宙から来た暴れん坊』かな。陽気な感覚がすごくいいんです。また、四次元怪獣ブルトンが出てくる第17話『無限へのパスポート』のSF性とコミカルさのバランスも『ウルトラマン』らしさだと思います。高原竜ヒドラが登場する第20話『恐怖のルート87』は、子どもを主人公にした悲しい物語が印象的です。この3本をおすすめしますが、ほかにも第19話『悪魔はふたたび』や、第30話『まぼろしの雪山』なんかも非常に魅力的です。

宇宙忍者の異名を持つバルタン星人は、「ウルトラ」シリーズを通した好敵手だ
宇宙忍者の異名を持つバルタン星人は、「ウルトラ」シリーズを通した好敵手だ[c]円谷プロ ※『ウルトラマン』は、TSUBURAYA IMAGINATIONで配信中!

バルタン星人やレッドキングが登場する王道のエピソードや、実相寺監督の回ももちろんすばらしいのですが、それとは別に、みんなが観るかどうか迷っている回について背中を押してあげるほうがいいかもしれないというのが僕のチョイスです。『ウルトラマン』のすばらしさを説明できる3本じゃないかなと思いますので、ぜひ観てみてほしいですね」

取材・文/山崎伸子

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