“クマの家族愛”に思わず感情移入…『シチリアを征服したクマ王国の物語』のメッセージを親子の声から読み解く
クマと人間との間の葛藤も…思わず家族で話したくなる物語
児童文学が原作ということもあり、ファンタジックでありながら、普遍的なメッセージを含んだ物語である本作。息子のトニオを見つけ出すために冒険へと踏みだしていくレオンスたち一行だが、その道中では、幽霊となったクマたちと出会ったり、化け猫に襲われたり…そんな険しい冒険の果てにレオンスは、サーカスのクマとして曲芸をさせられていたトニオとついに再会を果たすことになる。この再会のシーンには特に多くのコメントが集まっており、観客たちは親子の絆や愛に感動を覚えたよう。
「子どもの親に対する愛情、親が子どもを思う愛情の深さについて、どの家庭も、人間も動物も同じ」(40代・女性)
「レオンス王が子トニオをあきらめずに捜すシーンに感動した」(10代・女性)
「単純そうだけど、考えさせられ、心が動かされた。親子の愛を感じた」(50代・女性)
「奇跡的な再会をしたシーンは家族と話したくなる」(10代・女性)
サーカスでの奇跡の再会は、人間たちの心をも動かし、レオンスは大公に代わってシチリアの王に任命される、クマだけでなく人間たちのこともまとめる立場に。クマと人間が共に平和な生活を送るようになるが、その一方で人間化して本能を失いつつあるクマたちの在り方にも葛藤していく。
「人間と動物が共存できたら、こんな感じになるのかと考えさせられた」(10代・女性)
「人間とクマが最初に対話せず、戦ってしまうところを家族と話したい。何事も対話が必要」(40代・女性)
「クマと人間(動物と人間)がこんなふうに共に生きられたらおもしろいね。実世界でも自分たちと違う存在を受け入れてわかり合えたらいいと思う」(40代・女性)
「レオンス王が、クマはいるべきところにいるほうが幸せだと考えたところは、人間の(私自身の)生き方にヒントをくれたような気がしました」(40代・女性)
「考えさせられた。野生のクマも人間社会で暮らすうちに欲望に染められていく部分が怖かった」(40代・女性)
「レオンス王が、子どもに対する愛情と任務をまっとうしないといけない責任感の狭間で揺れ、苦悩する点が、働きながら子育てする世の女性と重なってきてせつなかった」(40代・女性)
ファンタジックな世界観であるものの、コミュニティ間での対立を示唆したり、現代を生きる自分たちともリンクする点が随所に見られる物語は、大人にこそ刺さる部分が多かったようだ。