2人のプロデューサーが明かす『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』制作秘話。20年にわたる“親愛なる隣人”との旅路
「MCU版は『ハリー・ポッター』シリーズのようなアイデアから始まりました」(ファイギ)
「『ホームカミング』でスパイダーマンをMCUに登場させる機会を得た時、これまでのスパイダーマン映画では行われなかった2つのことを探求しました。ひとつはスパイダーマンの年齢をもっと若くし、高校生活に入ったばかりで、パワーを持っていることに対処しながら高校生活を楽しんでいるということ。『ハリー・ポッター』シリーズがそうだったように、このシリーズではそれぞれ学校生活の1年が描かれていくというアイデアから始まったんです。この3年間にピーターはすばらしい冒険をし、『ノー・ウェイ・ホーム』ではその最終学年が描かれていきます。彼が望んでいるのは、最終学年になって普通の子と同じような経験をすること。ヒーローであることと普通の男の子であることの葛藤なのです」と、ファイギは語る。
『ノー・ウェイ・ホーム』の物語は前作『ファー・フロム・ホーム』のラスト、ミステリオ(ジェイク・ギレンホール)によってスパイダーマンの正体が世界中に公にされてしまうところから幕を開ける。ピーターの生活は一変し、さらにそれはMJ(ゼンデイヤ)やネッド(ジェイコブ・バタロン)の大学進学にも影響を与えてしまう。そこでピーターはドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)のもとを訪れ、人々の記憶を消すようお願いする。しかし世界中の全員の記憶から消えてしまうことをピーターがためらったため、ストレンジの魔術は失敗。突然マルチバースの扉が開き、様々な次元から“スパイダーマンの正体がピーター・パーカー”と知る者たちが集まってしまうのである。
「このシリーズでもう一つ探求したことは、より広いマーベル・ユニバースを舞台にし、そこにほかのヒーローたちがいることでした」とファイギは続ける。「最初の数作では、そういったいままでやらなかったことを、どのようにやるかと常に考えていました。だからこれまで描かれたキャラクターのこと、つまりヴィランの復活をやろうとは思いもしなかった」。
本作のコンセプトを見出すための出発点となったのは、もちろん『ファー・フロム・ホーム』でスパイダーマンの正体が明らかになったこと。そこからファイギとパスカルは、ワッツ監督、脚本のエリック・ソマーズ&クリス・マッケナと共に議論を重ねていったという。
「何年も前から私は、もしドック・オクを復活させるとしたらアルフレッド・モリーナを起用しなければならないと言い続けてきました。あの役を引き継ぐことは非常に難しく、簡単ではなかったんです。いつかそれが実現できたら楽しいと思っていました」と、『スパイダーマン2』に登場したドック・オクを復活させたいという願いが、かねてからファイギのなかにあったことを明かす。
「そして、ようやく今回その方法があることに気付いたのです。ピーターの人生はどのように変化し、混乱していくのか。そしてそれが友人たちにどのような影響を与えるのか。大抵のことに対処できるピーターだが、自分の行動で友人たちがアンフェアな影響を受けると精神的に疲弊してしまう。彼ならどうするか、そしてなにができるのか」。正体がバレてからのピーターの歩みを考えながら物語を構築していくことで“マルチバース”という方法論にたどり着き、「スパイダーマン」ファンにとって夢のような企画が生まれたということだ。