M.ナイト・シャマランの“映画術”が明らかに!『オールド』メイキング映像からひも解く、シャマラン・ワールドの創り方
ストーリーの補完に役立つシャマランのセンスが詰まった未公開シーン
収録されたコンテンツは10シーンにおよぶ未公開シーンと、4種のメイキングドキュメンタリー集で、どちらも映画を補完する資料として興味深い。未公開シーン集に収められているのは、施設の特徴について説明する「スパのオプション」や、ガイが息子の水着のサイズが合っていないことに気づく「トレントの水着」など、後の展開の伏線となる描写をはじめ、ガイとプリスカの関係をさりげなく描いた「ガイとプリスカのひと時」、美容や健康に気を配る女性が鏡に映った老いた自分にショックを受ける「鏡よ 鏡」、かつてこの場所を訪れていた男がビーチに関する考察をノートに記す「コールドオープン」といった補足的なエピソードもある。
一部、合成前のグリーンバックが映った映像もあるものの、どれも音声や効果音までついた完成形。レイアウトからカメラワークまで、シャマランらしさが存分に味わえる。削除の理由について言及はないが、映像を重視するシャマランだけに、説明的に感じられるカットは極力省きたかったのではないだろうか。
ほかにもビーチバレーに加わりたいのに幼いため相手にされないマドックスが寂しそうに試合を見つめる「マドックスは蚊帳の外」、施設スタッフの誕生日をみんなで祝う「誕生日会」といったややシニカルなシーンも興味深い。ブラックユーモアが利いた好エピソードだが、作品がかなりシリアスなので過度な毒気は省こうと考えたのかも。これら未公開シーンは、本編に組み込まれていてもなんの違和感もない完成度の高いシーンばかりだが、シャマランには過剰な説明と思えたのだろう。どこまでも妥協をしない、物語に対するストイックな姿勢がうかがえる。
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物語の舞台となるビーチのロケーションやシャマランの映像へのこだわりをひも解くメイキング映像
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