『ちょっと思い出しただけ』が描く“誰もが戻れないあの頃”「観たら甘酸っぱい、思い出したらほろ苦い」
過去を思い出す人も続出の日常的な恋愛模様
そんな本作は、クリープハイプの尾崎世界観がジム・ジャームッシュの『ナイト・オン・ザ・プラネット』(91)に着想を得て作った楽曲「ナイトオンザプラネット」を基に、松居監督が書き上げたオリジナルストーリー。
『ナイト・オン・ザ・プラネット』は、5つの都市を舞台にタクシードライバーと客が織り成す、ありふれているがどこかおかしい悲喜こもごもの人間模様が題材の1作。この名作が根底にある『ちょっと思い出しただけ』もまた、日常や恋愛の機微がリアルかつユーモラスに描かれている。
誰もが経験したことのあるような恋愛の喜びや痛みが、さりげなくちりばめられているだけに、思わず過去を思い出したという人も多かったようだ。
「一緒にケーキ食べるシーンは昔の恋人とあんなシーンがあったなと思い出した」(30代・女性)
「タクシーの中でのケンカのシーン。自分の気持ちをお互いにぶつけることしかできなくてすれ違っていくところで、同じような経験をちょっと思い出しました」(30代・男性)
「何気ない日常だが、皆、過去に戻れないことを実感した」(30代・女性)
「観たら甘酸っぱいけど、思い出したらほろ苦い」(30代・女性)
「言葉で伝えないとわかり合えない。若い時は気恥ずかしかったり、見栄を張ったりして、素直に伝えられないこともありました」(40代・女性)
また、本作はコロナ禍の描写を筆頭に、時代性にこだわった1作。マスクやタクシーの飛沫防止用シートといったアイテム、タクシーの形の変化など、いまではすっかり日常となったコロナ禍での生活から、コロナ以前の生活まで丁寧にさかのぼっていく。そんなさりげない描写にも「コロナ禍になる前を思い出しました」(10代・女性)という共感も寄せられていた。
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