藤原竜也&松山ケンイチが明かす、再タッグへの想いと役者としての責任感「結婚や人生の蓄積が非常にいいパワーに」

インタビュー

藤原竜也&松山ケンイチが明かす、再タッグへの想いと役者としての責任感「結婚や人生の蓄積が非常にいいパワーに」

「"孤高の人"だった竜也さんのイメージがかなり変わりました」(松山)

――元受刑者の小御坂(渡辺大知)を誤って殺してしまう緊張感漂うシーンもワンカット撮影でした。こちらはいかがでした?

藤原「おもしろいことでしかなかったですね。最初に僕と大知くんが揉み合って、そこに松ケンが来て、神ちゃんが来て、大知くんが倒れる。その後、血が流れて、カメラを僕らのほうに1回振って、最後に大知くんの顔に戻ってカットがかかるんですけど、何度やっても、死んでいるはずの大知くんが息をしているように見える。僕らとしては大知くんの体調も考慮して“人間は呼吸するものだから仕方ない”って思ったりもするんだけど、監督が妥協しないから、渡辺大知自身はどんどん焦っていく。それこそ彼は、OKになったあとで『気絶しそうになるまで息を止めていた』って言っていたから、笑っちゃいけないんだけど、あれはおもしろくて貴重な経験でした」

緊張感ある撮影のなかで一体感が生まれたと話す松山
緊張感ある撮影のなかで一体感が生まれたと話す松山撮影/興梠真穂

松山「あの撮影で一体感が生まれたような気もしますね。何度目かのテイクのときに、僕がちょっと失敗したんですよ。その時に、死んでいるはずの大知くんが吹いてしまったんです(笑)。そしたら、竜也さんが『なんで吹いてるの?』って冷たく言って。大知くんは『うわ~、すみません!本当にすみません』ってさらに焦り始めたんです。あれは竜也さんの計算だと思うんですけどね」

藤原「そこはもう探り合い!今回の物語同様の騙し合い、いじり合いですよ(笑)」

松山「マジでやらないと終わらないと思った大知くんは、最終的には息を止めて本当に死にそうになっていましたよ(笑)。OKが出たあとも『えっ、大丈夫?』って聞いたぐらい意識が朦朧としていましたから」

藤原「本人は、OKが出た時の撮影を覚えてないって言ってたものね」

松山「そうそう。『よくわかんなかったけど、身体が勝手に動いたんですよね』って言って。でも、そういう濃密な時間を最初に共有して、それがよかったなと思っています」

――劇中の圭太と純は、家族を守るため、島を守るために死体を隠し、殺人を隠ぺいしますが、彼らがとった行動をお2人はどう思いますか?

藤原「自首するのが常識的な考え方だと思うけれど、彼らは島の復興を成し遂げるためにそういう行動を起こしてしまった。難しいですね」

――仕方がないことだったと?

藤原は、脚本を読み新しい視点で描く本作に感心したという
藤原は、脚本を読み新しい視点で描く本作に感心したという撮影/興梠真穂

藤原「作品として見ればそう思えますね。だから、映画としてはすごくおもしろいけれど、誰にでも降りかかる非常に怖いことを描いている。それこそ僕は、子どもが犠牲になるような作品はどこか遠ざけていたところがあるんです。でも、今回の脚本を読み進めていったら、そういう子どもが犠牲になる話とはどうも違う。ああ、これは子どもを守ろうとした親が犯行に及んで、その家族の人生が崩れていく物語なんだ!こういう視点から描く作品もあるんだなって感心したんですけど、子どもや家族、島を守るためでも、たった一度のことでも、過ちは過ちですから、難しい問題だと思います」

松山「殺人も隠ぺいももちろん絶対によくないし、僕が彼らの立場だったら自首すると思います。ただ彼らをそこまで追い詰めた島の状況や社会の状況が根底にあるわけだから、殺人を犯した人間だけを裁けばいいという簡単な問題でもない気がします。追い詰められる人間を生むような状況自体を変えていかないと、現実の社会でもこういう悲劇は生まれてしまうような気がしますね」

――15年ぶりにガチで共演したお互いの印象も教えてください。

松山「『デスノート』の時は僕がまだコミュニケーションをうまく取れなかったし、対立する役どころということもあって、あまり話ができなかったんです。でも、『カイジ 人生逆転ゲーム』で久しぶりに共演した時に話ができるようになって。その後はお互いに状況も変わったので、家族の話なんかもするようになったんですが、竜也さんのイメージは最初のころとかなり変わりました。すごいパワーを持った俳優さんで、ひとつのことに真摯に向き合う、嘘のない方、という印象は変わらないけれど、以前は孤高の人っていう感じがしていたんです。でも、家族の話をしている時に、ああ、温かい人なんだなって思ったんですよね」

15年ぶりのガチ共演で、お互いの印象も変わったという
15年ぶりのガチ共演で、お互いの印象も変わったという[c]筒井哲也/集英社[c]2022 映画「ノイズ」製作委員会

藤原「『デスノート』のときは緊張していた、って松ケンは言うけれど、当時からある種の自信を持って現場に臨んでいましたよ。でも、結婚したり、歩んできた道や人生の蓄積が非常にいいパワーになっているような気がする。話したり、芝居で対峙すると、松ケンが背負ってきたものがなんとなくわかるじゃないですか?大切にしているものを抱えながら、ブレずやってきたんだろうなって今回も改めて思ったし、その松ケンの責任感と僕の責任感が、島を守る幼馴染みの役で共演した『ノイズ』の世界観にもピッタリだったので、僕は楽しかったですよ」

取材・文/イソガイマサト

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