「大人が観ても楽しめる、愛おしい映画」Amazonオリジナル映画『HOMESTAY』をLiLiCoがレビュー
「人生は一色じゃない、いろんな色が必要」
さて、シロが真としてそれまでの真の人生を探るうちに、仕事が忙しくて不在がちな父親(佐々木蔵之介)、そんな父親に不満を抱えている母(石田ひかり)、なぜか真と距離を置こうとする優秀な兄(望月歩)という、いびつな家族の実態が見えてくる。「でも、この家族は別にひどいわけじゃない。いまの日本の普通で平均的な家族だと思います。お父さんは頑固で古い人間であるけれど、いまも日本の約80%のお父さんは、似たようなものだと感じています。問題はお父さんだけじゃなく、この家族みんなが、仕事や学校や自分のことで忙しくて、コミュニケーション不足になってしまっていたこと。互いに思っていることをきちんと伝えられないことによって、結局、高校生の真はグチャグチャになって、自分が誰からも愛されていないと思い込んでしまった」と解説する。
そんな真に対して、望月が演じる兄が絞り出すように放つ言葉が、LiLiCoのなかで最も心に残っているという。「弟へ『向き合えよ!』というひと言は、お兄さんの心の叫びだと思う。兄自身も、どこかで向き合って来なかったけれど、面倒な弟とやっと本気で向き合う気になったからこそ出た言葉でもあって。望月さんも含めて、本当にすばらしい若手のキャスティングでした」。
さらに、「私の大好きな俳優さんである眞島秀和さんが、姿を変えた管理人として登場します。彼がシロに『何色に見える?』と紫色のセロファンを差し出すシーンがあるのですが、これもすばらしいシーンでした。紫に見えるけれど、実は赤と青のセロファンが重なって作られた色だという何気ない1シーンが、人生を語っているようにも読めるでしょ」とLiLiCo。「人生は一色じゃない、いろんな色が必要で。私はいつも、カラフルな色からハッピーをもらっているので、美術部所属の真が描くカラフルな絵のタッチや世界観がすごく好きでした。晶が美術室で、真の絵がたくさんしまわれている引き出しを開けた瞬間は、もう心が躍りましたよ!」。
まさに原作のタイトルが「カラフル」だということを思い出させる発言だが、LiLiCoのお気に入りのシーンはほかにも。「真が洋服を買いに行くファッショナブルなシーンは、まさに『プリティ・ウーマン』のような楽しさ。この年代の男の子が何着も洋服を試着するシーンなんて、あまり見たことがなかったので新鮮だったし、きっと映画を観ている男性の気分もアガると思いますよ」。
「最後には生きる希望やヒントを提供してくれます」
本作が放つメッセージに話題が至ると、「若い人たちは、若い時点でこの映画に出会えてラッキーだと思わないとダメ!」と断言する。「この映画は、違う立場の人や大人がどう思っているかについても、視野を広げてくれます。視野が広がると希望も生まれ、自分が大人になった時にも役に立つ。もう、学校やクラス単位で全員一緒にこの映画を観てほしいくらい。“人を思うとはどういうことか”を知るのは、勉強よりよっぽど大事です。だって日本に一番足りないのは、思いやりですから。おもてなしは完璧だけど、この国には思いやりが足りないと思う」と鋭く分析、指摘する。
同時に、大人にも広く深くアピールする作品だと訴える。「キャスティングを見ると若者向けの作品だと思いがちですが、私のような大人が観ても心から楽しめる愛おしい映画。むしろ20から30代の方に積極的に観てほしい。生きるってなんてステキなことだろうと、最後には生きる希望やヒントを提供してくれますから」。そしてシロという魂が真という身体にホームステイするというアイデアも、「私は昔から“自分の魂がこの体で生きている”という意識があったので、本作は感覚的にもとてもフィットしました。だから本作を観て、余計に自分の身体を愛おしいと思いましたし、もっと大切に生きようと思いました」と、いかに心に響いたかを語る。
そして、「それにしてもAmazonは、いろんなものを届けてくれるけれど、ついに“生きる喜び”まで届けてくれるようになったのか、と思いましたよ(笑)。Amazonのニッコリ笑ったロゴマークは、口の部分の矢印がAからZに向いています。すべての商品を網羅している、という意味が込められているそうですが、この映画を作ったことで本当にコンプリートしたんだな、と思いましたね!」と、見事なオチで締め括った。
取材・文/折田千鶴子
日本のAmazon初のオリジナル映画!『HOMESTAY』特集【PR】