ビル・マーレイにオーウェン・ウィルソン、ティルダ・スウィントン…ウェス・アンダーソン組の常連俳優まとめ
人気映画作家ウェス・アンダーソン監督の記念すべき第10作となる『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』が公開中だ。ビル・マーレイを筆頭に、アンダーソン監督作品おなじみのメンバーたちが顔を揃えている。観るたび発見のある本作、アンダーソン作品への出演歴に言及しながら、常連俳優たちの劇中の活躍を振り返ってほしい。
20世紀のフランスにある架空の街、アンニュイ=シュール=ブラゼ。アメリカの新聞社「カンザス・イヴニング・サン」の別冊「フレンチ・ディスパッチ」は、そこに編集部を構える人気雑誌だ。しかし、創刊者にして編集長のアーサー・ハウイッツァー・Jrが急死し、彼の遺言に従って「フレンチ・ディスパッチ」は廃刊を迎えることに。本作は、編集長の追悼号にして最終号の雑誌に掲載される1つのレポートと3つのストーリーが、ユーモラスにそしてちょっぴりセンチメンタルに展開される。アンダーソン監督ならではの軽妙洒脱な映像で、カラーやモノクロ、アニメーションへと変化する、心躍る作品だ。
大学時代のルームメイトでウェス・アンダーソンの盟友オーウェン・ウィルソン
最初にピックアップする俳優は、アンダーソンの商業デビュー作『アンソニーのハッピー・モーテル』(96)から『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(01)、ストップモーションアニメの『ファンタスティックMr.FOX』(09)など、監督作のほぼすべてに出演してきたオーウェン・ウィルソン。実は2人は大学時代のルームメイトという間柄で、『アンソニーのハッピー・モーテル』の基になった短編の脚本も共に書き上げたもの。そんなアンダーソンの一番の盟友とも言えるウィルソンは、本作では赤い自転車とベレー帽がトレードマークの記者、エルブサン・サゼラックとしてIN BRIEF「自転車レポーター」にトップバッターで登場する。アンニュイ=シュール=ブラゼの街を隅々まで知り尽くす彼が、そこに暮らす人々と歴史について、相棒の自転車を走らせながらレポート。元々職人の町だったという街の、現在と過去、そして裏の顔にも迫っていく。
『グランド・ブダペスト・ホテル』では老女も演じたティルダ・スウィントン
続いても、アンダーソン作品に欠かせない存在のティルダ・スウィントン。容姿端麗でありながら、『グランド・ブダペスト・ホテル』(14)では84歳の孤独な老女マダム・Dを喜々として演じていたのが印象的で、ほかにも『ムーンライズ・キングダム』(12)や『犬ヶ島』(18)に出演している。今回、彼女が演じるのは、STORY #1「確固たる名作」を執筆する美術界を知り尽くす批評家のJ・K・L・ベレンセン。文化人を招いた講演会で、この章の主人公となる服役中の凶悪犯にして天才画家のモーゼスの生い立ちや、彼の作品をひと目見た時の衝撃を聴衆に披露する。ベレンセンのキャラクターを完全にものにしたスウィントンの、もったいぶったしゃべり方がなんともおかしい。
人間味あふれる困り顔が魅力のエイドリアン・ブロディ
アンダーソン監督の出世作『ダージリン急行』(07)で主人公である3兄弟の一人を務めて以来、常連入りしたエイドリアン・ブロディ。同じく「確固たる名作」に出演する彼は、商売上手な美術商、ジュリアン・カダージオに扮している。囚人による作品展でモーゼスの才能にいち早く目をつけた審美眼の持ち主で、牢獄でモーゼスを口説き落としたり、彼を華々しくデビューさせたりと行動力も抜群だ。金儲けを優先する欲深い人物だが、なかなか新作を描いてくれないモーゼスに対して右往左往してしまうなど、人間味あふれる困り顔が憎めない。