映画館で極上ミステリー・クルーズを体感!名探偵ポアロと巡る『ナイル殺人事件』の舞台、神秘に満ちた古代エジプトへ
全長約116m、横幅約48mの大きさを持つカルナック号のセット
映画のおもな舞台となるカルナック号は、スタジオ内に全長約116m、横幅約48mの船体セットを建造。人々が客室やフロアを行き来する様が自由なカメラワークで描かれる。ほかにもオールド・カタラクト・アスワンは、実際のホテルを見学した美術スタッフがロビーやホール、中庭を含め1930年代当時のホテルをセットで完全再現。アブ・シンベルの神殿のセットは圧巻で、実物の神殿を測量し巨像が立つ神殿がスタジオに作られた。
そんな本作の撮影に使われたのが65mm(70mm上映用)フィルムのIMAXカメラ。一般的な35mmと比べ、面積比で約3倍というラージフォーマットのため緻密な映像が可能となる。俳優たちの顔をクローズアップしなくても表情を捉えることができるため、アンサンブルキャストが群像劇を繰り広げる今作ではその特性を発揮した。
上流階級のセレブたちを演じたキャストたちの衣装にも注目!
本作の登場人物は、大富豪の娘で相続人リネットにゆかりのある上流階級のセレブたち。彼らの豪華な衣装や装飾品も見どころだ。衣装デザインはヒュー・ジャックマン主演『レ・ミゼラブル』(12)など2度のアカデミー賞ノミネート経験を持つパコ・デルガドが担当。1937年の衣装を忠実に再現するだけでなく、情熱的なキャラクターの内面を代弁することに重きを置いたという。また、当時の映画スターの衣装も参考に、赤やオレンジなど色調を含め現代的な要素を取り入れ、いまで見ても十分に映える衣装を心掛けたそうだ。重要なアイテムとして劇中に登場するティファニーのイエローダイヤモンドなど、上質な装飾品にも注目したい。
冒頭でも説明したとおり、“愛”をテーマに豪華クルーズと謎解きミステリーが展開される本作。もともとクリスティは推理小説のほか、メアリ・ウェストマコット名義で「暗い抱擁」「愛の重さ」など恋愛小説も執筆(日本ではアガサ・クリスティとして出版)。本作はそんなクリスティの持ち味が生かされた作品といえる。ただし今回の映画は、『オリエント急行殺人事件』にも登場した映画オリジナルの登場人物ブークが絡んだことや、ポアロ自身の愛にまつわる秘密が明かされるなど、原作を読んだ人も驚くような展開を見せていく。映画だけの謎解きが味わえるのも『ナイル殺人事件』の魅力なのだ。
文/神武団四郎