濱口竜介監督「村上春樹さんにとっての文字が、私にとっては役者」と感謝!『ドライブ・マイ・カー』毎日映画コンクール日本映画大賞を受賞
濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』(公開中)が、第76回毎日映画コンクールの日本映画大賞と監督賞を受賞した。2月15日にめぐろパーシモンホールで開催された表彰式には、第72回ベルリン映画祭の審査員として海外滞在中の濱口監督に代わって、山本晃久プロデューサー、配給会社ビターズ・エンドの定井勇二が出席。監督からのメッセージを代読した。
村上春樹の短編小説を原作にした本作。舞台俳優の主人公・家福(かふく)に西島秀俊、ヒロインのみさき役に三浦透子を迎え、愛と喪失、希望の物語を描く。第94回米アカデミー賞では日本映画史上初となる作品賞にノミネートされる快挙を達成し、さらに監督賞と脚色賞、国際長編映画賞の計4部門でのノミネートを果たしている。
山本プロデューサーの代読した濱口のメッセージには「歴史ある賞の受賞を心より光栄に思っています」という喜びと共に、「一番に感謝を捧げたいのは、カメラの前に立ってくれた役者の皆さんです」と感謝の言葉がつづられていた。
さらに「村上春樹さんに映画化許諾のお願いをする手紙のなかでは、『村上さんにとっての一つ一つの文字に当たるものが、私にとっては役者なのです』という趣旨のことを申し上げた」と秘話もつづられており、「私の映画にとっては、彼らの存在が本質。私がよい監督に見えているとすれば、それはなによりもまず画面に映っている役者さんの姿、響いている声によって起こること。村上さんの世界観を生身の身体で表現するという、非常に困難な仕事をやり遂げてくれた役者さんたち」と西島や三浦をはじめとするたくさんのキャストの名前をあげながら、「皆さんの仕事を改めて称えたい。役者の皆さんがすばらしい形で映っているのは、多くのスタッフ、プロデューサー、数えきれない方々の支えがあってこそです。本当にありがとうございました」と一緒に歩んできたチームへの想いをあふれさせていた。
第94回米アカデミー賞に計4部門でのノミネートされたことについて、山本プロデューサーは「驚きと、それを喜んでくれている方々がいることがうれしいと言っていました」と濱口監督の反応を紹介。また定井氏は「我々がやっているインディペンデント映画は、こういう賞をいただいて評価していただけることで、また新たに多くのお客様に映画を届けることができる」と毎日映画コンクールで栄誉に輝いた心境を明かしていた。
取材・文/成田おり枝