阿部寛が北村匠海の才能を絶賛!「匠海くんは、俺がわかりづらいことを言ったら、すぐに理解してフォローしてくれる」

インタビュー

阿部寛が北村匠海の才能を絶賛!「匠海くんは、俺がわかりづらいことを言ったら、すぐに理解してフォローしてくれる」

いつの世も変わることのない親子の絆を描く“家族の物語”…。これまで2度、ドラマ化されてきた重松清のベストセラー小説「とんび」が、ついに映画化された。『とんび』(4月8日公開)は、昭和37年の瀬戸内海に面した小さな町で幕を開ける。人情に厚いが不器用な男ヤスが最愛の妻を事故で亡くし、遺された幼い息子アキラと共に、悲しみを乗り越えて力強く生きていく様が描かれる。

監督は、自身も“瀬戸内文化圏”で生まれ育った、『64-ロクヨン』(16)などを手掛けた瀬々敬久。主人公ヤスを演じるのは、『護られなかった者たちへ』(21)でも瀬々監督と組んだ阿部寛。前作から一転、陽気で一本気な昭和の頑固オヤジを全身で体現する。ヤスの深い愛情に育てられる息子アキラの思春期以降を演じるのは、北村匠海。心優しいアキラを、中高生から初老期まで刻々と演じ分けた。父と息子の関係は、衝突したり離れたり、息子の成長に伴って刻々と変わっていく。だが互いへの信頼と愛は、決して揺らがない。そんな父と息子を演じた阿部と北村に、現場で築いた役者同士の信頼関係を探った。

「ヤスという人間の“温度の高さ”は、大事にしていきたい」(阿部)

『とんび』で3度目の重松作品に出演となる阿部寛
『とんび』で3度目の重松作品に出演となる阿部寛撮影/河内彩


――重松作品は数々映像化されていますが、なかでも「とんび」は3度目の映像化になります。重松作品の魅力を、どのように感じられますか?

阿部「僕は映画『恋妻家宮本』以来、3度目の重松作品になります。重松さんの作品は、登場人物の心の機微や、心に届く感動的な言葉の描写が繊細に描かれていて、だからこそ映像化を望まれるのだと思います。本作も、やはりそこが魅力。お話をいただいた際は『3度目の映像化はどうなのか』と思いました。ですがいまこの分断の時代だからこそ、またこの作品をやる意味があると思い、参加させていただきました。ヤスという人間味の塊のような人物を自分が演じられるか、まさにヤスとの勝負でした」

北村「小説は、読み手に委ねる部分も多くある気がします。特に『とんび』は、本当に細かな感情が描かれていて、読みながらすごく完成された作品という印象を持ちました。だから年齢性別を問わず多くの人たちに届く物語であり、何度も映像化されて語り継がれるんだなと思います。そんな物語のなかで、ヤスがアキラに、アキラが自分の子どもへとバトンを受け渡していく。そして今回、僕にバトンが回ってきたなんて、こんな幸せなことはないと感じました。こうやって受け継がれていくんだな、と僕のなかでいろんなものが重なりました」

不器用で破天荒な父・ヤスを演じる阿部寛と、父の愛と周りの支えで成長していく息子・アキラを演じる北村匠海
不器用で破天荒な父・ヤスを演じる阿部寛と、父の愛と周りの支えで成長していく息子・アキラを演じる北村匠海[c]2022『とんび』製作委員会

――本作におけるヤスとアキラをどうやって打ちだしていこうか、など考えられたりしましたか?

阿部「自分オリジナルの味をあえて出す、という意識はあまりありませんでした。原作、脚本から感じたヤスをやる、とにかく素直にぶつかっていこう、瀬々監督が描くものについていこうと。個性が強い方もたくさん出演されるし、匠海くんとも初めて共演するし、そういうなかで生まれていくものが大切で、現場で生まれてくるものを大事にしようと思いました。ただ、ヤスという人間の“温度の高さ”は、原作でも脚本でも強く感じたので、そこは大事にしていきたいと考えていましたね」

北村「現場には阿部さんの背中があるので、それについていこうと思っていました。役を作るというより日々を生きることに必死でしたし、いろんな方とのコミュニケーションのなかででき上がった作品だと感じています。思春期以降のアキラは、成人、そして恋人を連れてくる…節目ごとに登場するので、各年代は意外と短いんです。その間の描かれていない年月も表わさなければならなくて。そんななか、リアルに自分の父親と飲んだ時に、“いつまでも父と子は、父と子だな” と思うことがあったんです。その時の感情や感覚は大事にしようと思いました。杏さん演じる恋人を連れて行くシーンでも、ヤスにとってアキラはやっぱり子どもなんだな、と感じたので」


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