阿部寛が北村匠海の才能を絶賛!「匠海くんは、俺がわかりづらいことを言ったら、すぐに理解してフォローしてくれる」
「人とのつながりのすばらしさを再確認してほしい」(北村)
――瀬々敬久監督の演出はいかがでしたか?
阿部「瀬々監督はどの現場でもがむしゃらに、1カット1カットすごい真剣に考えられて撮る方。今回も現場で、ずっと動かずに立ったまま考えられている姿を、何度も見ました(笑)。本当に撮影することが好きなんだなと。その姿がスタッフにもキャストにも、とてもいい影響を与えて、監督が必死にやられている姿を追いかけると、すべてがうまく稼働していくという感覚を持てるんです」
北村「僕は瀬々組には初参加ですが、現場で生まれていくものを瀬々監督が信じていると強く感じました。こちらに委ねてくれるところはすごく委ねてくれるし、監督が熱くこだわるところは、最後の最後までこだわる感じでした。監督が撮影していて楽しそうな瞬間を見るのが好きでしたね。特に砂浜でのラストシーン。風が強くて、砂嵐みたいな状態だったんです。しかも極寒で。でも最後まで撮りきったあとの瀬々監督がめちゃくちゃ笑顔で、『すごい経験だったね』ってうれしそうな姿を見て、とってもほっこりしました(笑)」
――父子の絆だけではなく、町のみんながアキラを育てたというか、地域が子どもを育てる古きよき時代がとても味わい深いです。
阿部「僕の子ども時代は、ヤスのような存在のおじさんって、親戚にもいたし、近所にもいましたからね。喧嘩をしている場面に出くわして、『おばさーん、また喧嘩してるよ』とほかの大人を呼びに行ったり(笑)。反面教師じゃないけれど、子どもながらに、すごくあったかい人というのはわかっていて。でも、たまに空回りしている姿もかわいく見えるというか。近所の怖いおじさんや取り巻く町の人たちから、社会を学んでいくというのは、子どもにとってとても大事だと思います。時代が変わり、場所によってはそういう人間関係や社会性を学ぶ機会が乏しくなったのは、やっぱり残念ですね。だからこそ、『とんび』のような映画を観て心豊かになってほしいし、そこも本作の大きな魅力でもあると思います」
北村「僕は東京で生まれ育ったので、そういう地域性みたいなものは子どものころからすでに薄かったですね。ただ子どものころに両親の実家に行くと、周りの親戚がいっぱい集まって来て。そういう空気は、すごく好きでした。いまはさらにコロナ禍だから、より人との距離が開いてしまった。だからこそ改めて『とんび』で、人とのつながりのすばらしさを再確認してほしいです」
取材・文/折田千鶴子