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中井貴一&立川志の輔が語る、勘違いと偶然の出会いから歩み始めた『大河への道』

インタビュー

中井貴一&立川志の輔が語る、勘違いと偶然の出会いから歩み始めた『大河への道』

「歴史上の偉人も現代を生きる人も、たいして変わらない」(中井)

――現代と江戸時代での一人二役もおもしろい設定でした。

中井「この設定は最初から考えていたものです。どんなに時代が過ぎても、人間というものはたいして変わらないことを表現したいと思っていました。歴史というのは後世の人間が作り上げるもので、当時の人たちはその時代を必死に生きているだけ。いま“偉人”と呼ばれている人たちも、当の本人は決して偉人になろうとしていたわけではなく、後の世の人が偉人と崇めているわけです。なので香取市の市役所の人たちも、地図を作っていた測量隊の人たちも、たいして違わないよねというのが伝わればいいなと思っています」

大物脚本家、加藤(橋爪功)の思いもよらぬ発見とは
大物脚本家、加藤(橋爪功)の思いもよらぬ発見とは[c]2022「大河への道」フィルムパートナーズ

――中井さん、志の輔師匠が作品に携わる際に大事にしていることを教えていただきたいです。

中井「脚本です。役者はいろんな役に化けるのが仕事なので、役柄がいい人か、悪い人であるかなどは重要ではありません。それよりも、脚本の一部にでも共感できることが大切です。その結果、作品が当たっても外れても、その共感があって乗った船なら沈没しても後悔はしません。制作会社は造船会社で、脚本が船、監督が船長で、我々俳優やスタッフは乗組員です。船の母体がしっかりできていないと、いくら船長や乗組員がよくても船は進みません。だからこそ、脚本のあり方には一番こだわるし、神経を使います」

――今回の場合は、脚本ができる前から携わっているので、軸となるのはやはり志の輔師匠の原作になるのでしょうか。

中井「師匠の落語が、船の見取り図としてきちんとできていたことは大きかったです。ただ見取り図はあるけれど、ぼかしている線が多くて(笑)。映画にするうえで、僕たちでしっかり線を引く必要はありました。おおよその見取り図に惚れ込んでしまったものですから…」

現代パートでも測量シーンが登場
現代パートでも測量シーンが登場[c]2022「大河への道」フィルムパートナーズ

志の輔「あははは。僕の場合は、落語でなにが言いたいのか、その基準が決まった時が一番燃えます。昔、師匠の談志に言われた“この落語でお前はなにが言いたいんだ”という言葉が、ずっと僕の中に残っています。その言葉を僕なりに解釈し、自分が言いたいことをメッセージとして伝えられるようにと、ここまで落語をやってきました。そのおかげで、僕は伊能忠敬のすばらしさ、そして彼を支えた人たちの心の喜びを伝えたいという気持ちになり、この落語を作ったわけです」


――大河ドラマ常連の中井さんに伺います。大河の主人公になる人物の条件はなんだと思われますか?

中井「正直わからないです。僕が武田信玄をやらせてもらったころは、戦国ものは視聴率が取れるという風潮がありました。明治維新や幕末は数字が取れないというのも最近は変わってきていますし…。人よりも現象が主軸になっていくような感じかな。パーソナリティより社会現象的なものにフィーチャーしていく気がしています」

志の輔「僕はぜひ伊能忠敬を大河ドラマにしてほしいです。落語ではオチがないと困るので、“大河ドラマにしたかったけれど、なれなかった”としましたが、何年かあとに大河ドラマにしていただけたらと思います。ただ、やってくれる方がいらっしゃるかな、地味だから(笑)」

息ぴったりの二人が自分たちの”大河への道”を語る!
息ぴったりの二人が自分たちの”大河への道”を語る![c]2022「大河への道」フィルムパートナーズ

中井「伊能忠敬の場合80歳近くまで、子役も含め3人くらいで演じる必要がありますよね。僕は、このプロジェクトが動き出して以降、つい最近まで大河のニュースがあるたびにドキドキしていました。“次の大河ドラマって誰?渋沢栄一?じゃあ、大丈夫だね”“次は鎌倉殿?よかった!”という感じで。今度、三谷幸喜さんにお礼を言わなきゃな、って思っています(笑)。これから先は師匠と“伊能忠敬を大河の主役にする会”を発足し、心置きなくそっちの方向に舵を切り進んでいこうと思います!それが我々の最終的な“大河への道”です(笑)」

取材・文/タナカシノブ

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