批評家が選ぶ、サム・ライミ監督作ランキング!「死霊のはらわた」「スパイダーマン」など“フレッシュ”なおすすめ10選
もっとも高い評価となる95%フレッシュで並んだのは、やはり「死霊のはらわた」シリーズの2作品。得票数の差で『死霊のはらわたII』が『死霊のはらわた』を上回ることとなったが、どちらも紛うことなきスプラッターホラーの名作と呼ばれるにふさわしい高評価。
5人の若者たちが森で見つけた小屋の地下室から“死者の書”を発見。興味本位での行動から、森に封じ込められていた死霊たちを目覚めさせてしまう『死霊のはらわた』。インディペンデント映画らしく荒削りだが、アイデア性に富んだホラー描写でカルト的人気を集めたことも充分に頷ける。結果的に興行面でも成功を収め、およそ10倍の製作費をかけて『死霊のはらわたII』が完成。こちらは映画として格段にグレードアップを遂げており、ライミの演出力の高さを存分に味わうことができる。
そんな「死霊のはらわた」の3作目に当たる『キャプテン・スーパーマーケット』も、73%フレッシュというなかなかの高評価を獲得。ホラーに加え、コメディなどあらゆる娯楽性を詰め込んだ同作はかなりの変わり種だが、やはり上位10傑を見るとライミが“ホラー監督”としていかに愛されているかがよくわかる。「スパイダーマン」3部作の直後に手掛けた『スペル』が92%フレッシュと想像を上回る高評価。もはや伝説と化したあのラストシーンをはじめ、インパクトの強いホラー描写を扱わせたらライミの右に出るものはいないだろう。
「死霊のはらわた」から「スパイダーマン」までの約10年の間は、おそらく試行錯誤の期間。ホラーではない佳作を立て続けに発表していた。そのなかで特に輝くのは、90%フレッシュを獲得した『シンプル・プラン』。とある田舎町を舞台に、墜落した飛行機から大金を見つけた登場人物たちの欲望が渦巻く本作。サスペンス映画とはいえ、“人間の怖さ”を描くという点でライミのホラー監督としての手腕が遺憾なく発揮されていると見える。
また、58%の評価で惜しくも11位に甘んじたのが、西部劇の『クイック&デッド』(95)だが、レオナルド・ディカプリオやラッセル・クロウといったその後大ブレイクを果たす俳優を輩出。その資質を見抜く能力の高さは、のちの「スパイダーマン」3部作にも大いなる効果をもたらしたといえよう。
そして「スパイダーマン」3部作は、2作目が93%フレッシュでもっとも高く、1作目も90%フレッシュを獲得。両作の魅力についてはもはや説明するまでもないだろう。映画技術の進歩を証明し現在まで続くアメコミ映画ブームの礎を作りあげたと同時に、いわゆるヒーロー映画としてではなく「スパイダーマン」=青春映画であることをまざまざと示す。それが先日のMCU版『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の映画としての魅力をこの上なく高めたことは間違いない。
ほかの2作と比較すると批評的に伸び悩んだ『スパイダーマン3』の後、ライミは新たな「スパイダーマン」作品を手掛ける予定だったが、さまざまな事情から降板。もしライミが4作目を作っていたらと、夢想したファンも少なくないだろう。しかし、ついに公開された『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(公開中)で、ライミは15年ぶりにマーベル作品へ復帰を果たした。
『ノー・ウェイ・ホーム』でピーター・パーカーのメンター的役割を果たしたドクター・ストレンジの単独映画をライミが手掛けるというのはなんとも運命的。ホラー監督であるスコット・デリクソンが前作『ドクター・ストレンジ』を手掛けたことを踏まえれば、あの世界観とライミの作風との相性がいいというのにも納得だ。事実、公開されたばかりのスコアでは80%フレッシュという高評価を獲得している。
先日現地のインタビューで、マグワイアと新たな「スパイダーマン」を作ることへの意欲ものぞかせていたライミ。マーベルファンもライミファンも、彼の次の一手から目が離せなくなりそうだ。
文/久保田 和馬