渋谷の道玄坂上や赤羽…1990年代東京を完全再現!「TOKYO VICE」が挑んだ“世界で最もロケが難しい都市”での撮影秘話
マイケル・マンのイメージにマッチした赤羽エリア
百軒店以外では、歓楽街が賑わう赤羽エリアも、マン監督が抱いていた東京のイメージにマッチ。ジェイクが一人暮らしをしているアパートをはじめ、居酒屋で入社試験の勉強をしていたり、夜の街を歩いたりといった、彼が新聞記者になる前の一連のシーンはすべて赤羽で撮影された。「ジェイクが最初に街を歩いているシーンで、赤い鯛の看板が目立つ形で映っていますが、あれはすごく監督が気に入っていて。ロケハンでも何枚も写真を撮っていました」と福井が撮影準備時のエピソードを語る。
また、ジェイクのアパートの外側のビルにかかっている巨大な女の人の絵は、監督が強くこだわった特製とのこと。映像でのこの絵は、実際に建物にかかっているように見えるが、実はそうではないらしい。「カメラから映らないところに、工事で使う垂直リフトという機械を使用しています。その機械に単管を仕込んで、建物にはいっさい触れずに、まるで建物の壁にかかっているかのように地上から立ち上げました」と説明。続けて、コロナ禍で撮影中断があったことにも言及し、その前後で絵が変わっているとのこと。「あれはターポリンという垂れ幕のような布で作っているんですが、諸々含め100万円くらいするんです。美術部さんに伺ってビックリしていました(笑)」と大作らしい豪快なエピソードも教えてくれた。
コロナ禍ゆえに可能になった新宿ゴールデン街でのロケ
コロナ禍による半年間ほどの撮影の一時中断は、ほかにも様々な面で影響を及ぼした。例えば、劇中でジェイクがある事件と関係がありそうなローン会社を訪ねていくと、ビルの中がもぬけの殻だったというシーン。ここは六本木で撮影したものだが、「撮影場所がなかなか決まらず、監督がようやくOKを出した大きなビルが、コロナによる撮影中断の間に建て替えになって。撮影再開時にそのビルが丸ごとなくなり、巨大な駐車場になっていた、ということもありました」と鎌田は笑う。
一方、コロナ禍だったからこそ、撮影が可能になった場所もあった。福井は「新宿のゴールデン街でのロケは、まん延防止等重点措置期間で、お店がお休みだったことで可能となりました。現在の、お客さんが戻ってきたなかで同じ撮影をしようとしても、はたしてできるかどうか…」と振り返る。ただ、ゴールデン街のロケには何百万円という費用がかかり、1軒ごとに交渉して許可を取ったのだが、「ゴールデン街を全部押さえて、スタッフ一同、一晩中スタンバイしていたのですが、その前の(マイケル・マン監督の)撮影が朝になっても終わらず、結局、ゴールデン街では撮れなかった」という残念な結果になったそう。