中井貴一が立川志の輔にかけた一本の電話。『大河への道』に込めた、“時代劇”への想いとバトン
中井貴一が主演と企画を務め、松山ケンイチや北川景子ら日本を代表する豪華キャスト陣が集結した『大河への道』(5月20日公開)。立川志の輔の新作落語「大河への道 -伊能忠敬物語-」を原作とした本作の誕生の背景には、「“時代劇”を残さなければ」という中井の並々ならぬ想いがあったという。
千葉県香取市役所の総務課に務める池本保治(中井)が、観光振興策を検討する会議で苦し紛れに出した“郷土の偉人を主人公とする大河ドラマ”という提案が採用され、伊能忠敬を主人公とした大河ドラマの開発プロジェクトが始動。しかしその矢先、忠敬が地図完成の3年前になくなっていたという驚くべき事実が明らかに。しかしそこには、忠敬の志を継いで地図を完成させるため、一世一代の隠密作戦に挑んだ弟子たちの感動のドラマが隠されていた。
『壬生義士伝』(03)や『次郎長三国志』(08)、『柘榴坂の仇討』(14)など、これまで様々な時代劇作品に出演してきた中井。「“時代劇”を残さなければならない、ということをいま一番大事にしています。後輩にも受け継いでいってもらい、残していかないと日本の文化がなくなってしまう気がしていて」と、この伝統を守るため後世に残すことができる“時代劇のかたち”を模索していたという。そんな時に出会ったのが、“落語を超えた究極の話芸”と評される「大河への道-伊能忠敬物語-」だった。
その圧倒的なおもしろさに惹かれた中井は、「ぜひとも映画化させてほしい」と立川志の輔に電話を掛け、本作の企画が動きだすことに。「この落語を映画化することができたら、きっと新しいかたちで時代劇が作れる、そう思いました。タイムスリップというかたちではなく、現代劇と江戸時代を明確に分け、シリアスを江戸パート、コメディを現代パートとカラーも分けることでおもしろいかたちとなる。また、偉業を成し遂げようとする伊能忠敬の弟子たちと、その偉業に気付いた現代人をうまく対比できたら」と、ひとすじの希望を見出したことを明かす。
伊能忠敬を題材に現代と江戸時代を行ったり来たりする斬新なストーリーに加え、2つの世界の登場人物を中井をはじめとした豪華俳優陣が一人二役で演じるというユニークさも大きな見どころのひとつとなっている本作。日本地図の完成から200年の時を経て明らかにされる、日本史の常識をひっくり返す大発見と、伊能忠敬の想いを継ぐ名もなき者たちの道のりを、ぜひとも劇場で目撃してほしい。
文/久保田 和馬