岡田准一、『追憶』は「降旗康男監督へのラブレターです」

インタビュー

岡田准一、『追憶』は「降旗康男監督へのラブレターです」

『駅 STATION』(81)や『鉄道員(ぽっぽや)』(99)など、高倉健を中心とした名優を撮り続けてきた降旗康男監督と撮影の木村大作が、『憑神』(07)以来9年ぶりにタッグを組んだヒューマンミステリー『追憶』(5月6日公開)。主演は岡田准一。岡田と降旗監督にインタビューし、撮影秘話を聞いた。

幼なじみの3人が、ある事件をきっかけに他人として生きていくことに。25年後、その3人が刑事、容疑者、被害者という形で再会する。刑事の四方篤を岡田が、容疑者の田所啓太を小栗旬が、被害者の川端悟を柄本佑が演じた

降旗監督は岡田にオファーした理由についてこう述べた。「何だか面白い映画になるんじゃないかという予感がまずあったんです。それで主人公をやってもらえる俳優さんは誰だろうと思った時、立っているだけで感情がこもる俳優さんだったらいいなあと思いまして。岡田さんだったらそうなってくれるんじゃないかと思い、お願いしました」。

岡田は本作がオリジナル脚本で、降旗監督がメガホンをとり、木村がカメラを回すと聞き、出演を快諾した。「是非とも参加したいという思いで参加しました。降旗監督のすごく強い思いを感じましたし、僕は呼んでいただけるだけで光栄なので、嬉しかったですね」。

降旗監督と木村大作のコンビネーションについては「共通言語があって、お互いにわかり合っている感じがしました」という岡田。

「過去に大作さんが暴れているのを降旗監督が羽交い締めにして止めたというエピソードもあるようで。陰と陽みたいな感じで全然タイプが違うけど、以心伝心というか、すごくハーモニーのある現場でした。数々の戦場をくぐりぬけてきた経験をもつおふたりが、なんだか羨ましくも思えました。でも“レジェンド”と言うと監督は嫌がるんですよ」。

降旗監督は「いやいや。まだ、現役ですし」と微笑む。岡田は「勝手にレジェンドにされたら困るとおっしゃられて」といたずらっぽい笑みを浮かべる。「でも、僕たちから見るとレジェンドです。そういう懐の深さを感じる現場でした。何よりも映画の撮影は楽しいんだということを伝えられた気がしました。もちろん僕たちは日々葛藤しながら撮影に臨んでいました」。

現場ではどのシーンもほぼ1カットで撮っていったので、岡田たちは自分がちゃんとできているのか、とても不安に思ったようだ。

「大抵の場合1回で撮影が終わるんです。もし、撮れなかった場合に違うカットも撮る。大作さんの場合は現場にカメラが4台あったり、下手すると6台あった時もありました。だから1回で撮影が終わっちゃうんです。もちろん1回目の芝居がいいということもあるけど、フィルムで撮る場合は何回も回さない撮影方法でした。だいたい2時、3時で撮影が終わるので、僕たちはみんなでいっしょにサウナに入って反省会をするんです。

やっぱり集中力が必要でした。極端に緊張してガチガチになってしまう人と、それを楽しめる人と、キャストもスタッフもくっきり分かれていましたね。そんなことが試される現場でした。僕は気負いがあり、主演としての責任も感じましたが、緊張をプラスに変えつつ、少し考えすぎてしまったかなという思いはあります。にも関わらず、現場は不思議と楽しかったです」。

岡田は「今回の経験がとても大きな財産になりました」と言う。

「きっと降旗監督は今の僕を評価するというのではなく、未来の僕に向けて『もっと頑張りなさい』という思いがおありになったのではないかと。その場で完成形を求めるのではなく、もっと先の役者人生を進んでいくなかで、いい経験になればと考えてくださっていた気がします。監督とはそのような会話を交わしていないですけど、僕は監督や大作さんに対して『どう思っていますか?』『どう見えてますか?』とラブレターのような形でお芝居をしていた気がします」。【取材・文/山崎伸子】

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