期待と不安は7:3、鑑賞後は大満足!“ガンオタ”と“ガンムチ”が『ククルス・ドアンの島』を観てみた!

コラム

期待と不安は7:3、鑑賞後は大満足!“ガンオタ”と“ガンムチ”が『ククルス・ドアンの島』を観てみた!

安彦良和が監督を務める劇場版アニメ『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』(6月3日公開)。「ククルス・ドアンの島」は、1979年放送のテレビアニメ「機動戦士ガンダム」第15話のエピソードで、主人公のアムロ・レイと敵対するジオン軍の脱走兵ククルス・ドアンを通し、戦争の悲哀を描いた屈指の名作だ。テレビアニメ放送から43年の時を経て、伝説のエピソードが安彦監督の手によって劇場版として復活した。

伝説のエピソードを映画化する本作は、ストーリーテリングやアクションシーンまで、ガンダムファン、いわゆる”ガンオタ”の期待に見事応えたものとなった一方、ガンダムに関して知識のない映画関係者、いわば”ガンムチ”の層からも、その仕上がりを称賛する声が挙がっている。

そこで、「機動戦士ガンダム」から観ている映画関連会社勤務の渡辺(40代男性)とライターの田中(40代女性)、ガンダム初心者であるMOVIE WALKER PRESS編集長の下田(30代女性)、「機動戦士ガンダムSEED」から入った編集スタッフの高橋(20代男性)の4人で座談会を実施。”ガンオタ”と”ガンムチ”、それぞれの目線で本作の楽しみ方や見どころを語った。

「ガンダムファンとしても楽しめるし、1本の映画として成り立っている」(田中)

テレビアニメ版を新たな切り口で映像化する本作では、戦争に巻き込まれ、地球連邦軍の新型モビルスーツ“RX-78-02 ガンダム”のパイロットになることを余儀なくされたアムロ(声:古谷徹)が、オデッサ作戦を間近に控えた“帰らずの島”での残敵掃討任務のさなか、20人もの子どもたちと共に暮らすジオン軍の脱走兵ドアン(声:武内駿輔)と出会う物語が描かれる。

下田「最初に、ガンダムを観てきたみなさんの映画の感想は?」

田中「私は、“ドアンのその後”が知りたかったので、観る前の期待と不安は7:3くらいでした。観たあとは、9:1ぐらいになったかな。ガンダムファンとしても楽しめるし、ガンダムということを除いても1本の映画として成り立っていると思いました。満足度はかなり高いです。『殴ったね!』のおなじみのシーンも出てきて、それがとってつけたようなおまけシーンになっていない。ファンは『来たぞ!』とワクワクするし、ガンダムにあまり触れたことない人でも、どこかで聞いたことがある有名なシーンとして楽しめると思います。楽しいと同時に、ガンダムって一生答えが出ないテーマを描いているんだな、と改めて感じる作品でした」

”ガンダム無知”な編集長は、アムロたちの姿をどう捉えたのか?
”ガンダム無知”な編集長は、アムロたちの姿をどう捉えたのか?[c]創通・サンライズ

下田「ガンダムにほとんど触れたことがない私でもキャラクターの関係性を理解できたのは、名セリフ・名シーンがあったことも大きいです。名シーンって、ファンサービスというだけじゃなく、そのキャラクターの性格やバックグラウンドが凝縮されたシーンなんだなと。それがあるだけで、説明が省略できる。説明されすぎていないところも観やすかったし、“意味のある引用”がいっぱいあると感じました」

田中「公式にも発表されていたシャア(・アズナブル)の登場はサービスでしょうけれど(笑)。安彦監督にインタビューした時にも、『あれはファンサービスです』とおっしゃっていました。ある種の友情出演なんだと思います」

下田「ファンは、素直に喜んでいいんですね(笑)」

渡辺「ドアンは、シャアに並び称される伝説的なパイロット。そういう意味でもシャアの登場は必要だったとも思っています。劇中ではハッキリ描かれていないけれど、ドアンは軍人としてもすごかったんだぜ、ということを暗喩しているんだと思いました」

田中「なるほど。過去シーンを挟むとか、直接的にシャアとドアンの関係を説明するシーンはないですよね。それよりも脱走兵となり、いなくなってしまったドアンを描くことにフォーカスしている。説明はなくてもファンはバックグラウンドを想像して楽しみますしね(笑)」

渡辺「背景や細かい説明がなくても、しっかり楽しめるところはすごいと思いました。サービスするべきところと、描くべきところのバランスがすごくよかったです。サービスしすぎると完全なるファンムービーになるので、1本の映画として幅広い層が楽しめるように作られているのはいいなと思いました」

高橋「確かに。僕は(2002年放送の)『機動戦士ガンダムSEED』以降の世代なのですが、言い方はあれですが、ガチャガチャ戦うシーンが続くわけでなく、すごくシンプルで魅力的な物語が描かれているという印象を受けました。ニュータイプも出てこないし」

田中「おさえておくべき用語、みたいなものも必要ないですしね」

高橋「だから、初心者でも入りやすいと思います!」

下田「そもそもガンダムを観てきた皆さんは、『ククルス・ドアンの島』が映画化されると聞いた時は、ぶっちゃけどう思ったんですか?」


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【写真を見る】「めっちゃ人気出ちゃうんじゃ」…ガンダムファンも絶賛!魅力あふれる新生ククルス・ドアン[c]創通・サンライズ

田中「安彦監督から『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の時にガンダムを描くのは最後かもしれないという発言があって。でも、なにかはやるだろうという期待を持ちつつ待っていたら、『ククルス・ドアンの島』をやるという話で。個人的には伝説のエピソードとしてそれ以上描かない選択もありだと思ったんですが、このエピソードをやる意味はきっとあるんだろうなと、どんな描き方をするのか気になっていました」

高橋「どうしてこのエピソードを?とは思いました(笑)。僕は『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の漫画を読んでいて、続きを描くとばかり思っていたので。正直、どう描くのだろうという不安の方が大きかったです」

渡辺「ずっと観てきたファン目線で言うと、伝説回をやるという着眼点がすごいと思いました。安彦監督自ら映画化を提案したと聞いて、自身が作画に携わることができなかったあのエピソード、やり残したことをどう昇華させるのかファンとしては観ておかなければ、見届けなければいけないという気持ちでした」

下田「私は伝説回であることはやたら耳にしたのですが(笑)、正直中身は知らなくて。渡辺さんもおっしゃたように、安彦監督が思うところがある回というところは、よくも悪くも伏線のような感じがしていました」

渡辺「当時のアニメにはよくあったことで。外部スタッフが参加することによって生じる奇跡の回、そんな立ち位置のエピソードですね」


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