ド肝を抜かれる圧巻のステージ!湯浅政明『犬王』が“熱狂”を生みだす3つのポイント

コラム

ド肝を抜かれる圧巻のステージ!湯浅政明『犬王』が“熱狂”を生みだす3つのポイント

『夜明け告げるルーのうた』(17)でアヌシー国際アニメーション映画祭の長編グランプリを獲得した湯浅政明監督が、古川日出男の「平家物語 犬王の巻」をミュージカル・アニメーションとして映画化した『犬王』(公開中)。公開以降、SNS上では「最高に“ロック”なアニメ」などと興奮冷めやらぬ声が続々。本稿では、本作の“熱狂”を生みだす3つのポイントを紹介していきたい。

『犬王』は公開中
『犬王』は公開中[c] 2021“INU-OH”FilmPartners

物語の舞台は室町の京の都。猿楽の一座に生まれた異形の子・犬王は、周囲から疎まれその顔を瓢箪の面で隠された。ある日、平家の呪いで盲目になった琵琶法師の少年・友魚と出会い、名よりも先に歌と舞を交わす2人。乱世を生き抜くためのバディとなった2人は、お互いの才能を開花させながら、唯一無二のエンタテイナーとして人々を熱狂させていくことに。

アニメだからできた、実写以上にリアルなダンスアングル

これまで様々な作品でアニメファンに衝撃を与えてきた湯浅監督が、自ら“集大成”であると語る本作。そのなかでもひときわ注目を集めているのは、実写以上にリアルに激しく描かれるキャラクターの動きだ。『夜明け告げるルーのうた』や『きみと、波にのれたら』(20)でも音楽とダンスを描いてきたが、本作では先にキャラクターの動きを作ってから、それに合わせた楽曲を大友良英が制作。それによってキャラクターの動きと音楽が見事にシンクロし、独特なステージを披露する犬王の動きが描かれていく。


実写では描けない、アニメならではの映像表現で魅せる
実写では描けない、アニメならではの映像表現で魅せる[c] 2021“INU-OH”FilmPartners

また、アニメ作品で頻繁に用いられるロトスコープやモーションキャプチャーのような実写を参考にした技法は取り入れず、あえて実写では描けないアングルでステージを魅せる。その脅威的な作画を実現したのは、総作画監督を務めた亀田祥倫と中野悟史を中心とした“Team 犬王”のメンバーたち。湯浅作品を共に作りあげてきたキャラクター設計の伊東伸高や演出の山代風我に、「機動戦士ガンダム」や「輪るピングドラム」などを手掛けてきた美術監督の中村豪希。一流のスタッフ陣が作りだす熱量たっぷりの映像表現が、“湯浅ワールド”にさらなる彩りを与えている。

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