実写映画で改めて感じる”ハガレン”のメッセージとは。『鋼の錬金術師』完結編を原作ファンがレビュー!

コラム

実写映画で改めて感じる”ハガレン”のメッセージとは。『鋼の錬金術師』完結編を原作ファンがレビュー!

荒川弘による大人気漫画を実写映画化した『鋼の錬金術師』。2017年から約4年の時を経て、5月20日に続編『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』が、6月24日より後編『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』が公開となった。

新作の二部作公開にあたって、期待と不安が入り混じり、筆者を含め複雑な感情になった原作ファンも多いはず。さらに今回は完結まで描くということで「あの膨大な物語を?どうやって!?」と戸惑いもあった。が、実際に完結編二部作を観てみると、スクリーンに映える仕上がりで、想像以上にイイ。それどころか、後編ではグッと涙ぐみさえしてしまった。今回は原作ファンである筆者が、映画版二部作を観た感想をレビュー。原作ともアニメとも違う、リアルな世界に落とし込んだ実写映画ならではの魅力を、様々な視点から紹介する。後半では、原作者・荒川弘が本作を観た感想コメントもたっぷり掲載!

※以下からは『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』のストーリーの核心に触れる記述を含みます。

原作をリスペクトしつつ、映画として完成させた物語構成

今回メインとなるのが、原作でも人気のキャラクターであるスカーにまつわる物語と、大ボスとも言える“お父様”とエドの最終決着だ。原作読者ならば、“お父様”の元にたどり着くまでにエドとアルがどれだけの苦難を乗り越えてきたかを知っているだけに、再び「どうやって映画の尺でまとめるのか?」という疑問が頭をもたげてくる。

となると、大胆なエピソードのカットが気になりそうなものだが、今作を実際に観ると「この話をちゃんと描いてくれてありがとう」という気持ちになる。つまり、原作で肝になるエピソードをメインに据え、それぞれがカルマから解放されるシーンを丁寧に描いていく構成なのだ。どうしてもストーリーが駆け足になる点は否めないが、なぜエドが“お父様”にたどり着き、目的を果たすことができたのか、という点が自然に描かれている。

本作ではラスボスの”お父様”につながる、物語のクライマックスが描かれる
本作ではラスボスの”お父様”につながる、物語のクライマックスが描かれる[c]2022 荒川弘/SQUARE ENIX [c]2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会


3次元ならではの迫力に圧倒される、CGと美術

前作『鋼の錬金術師』の最大の違和感はおそらく、国際色豊かなキャラクターを日本人が演じている、ということだったのではないか。ハガレンの絶妙な世界観は、漫画だからこそ描き切れていた、という部分がある。しかしながら、今回はその違和感がだいぶ払拭されている。観る側がキャラクターのビジュアルに慣れたという点はあると思うが、前作のように実際に海外で撮影を行ったわけではないのに、今回のCGやセットで作られた背景のほうがキャラクターになじんでいるように感じられた。それぞれのビジュアル自体も、衣装やヘアメイクがより原作に近い形にアップデートされている。また、モブとなるような登場人物も少なく、メインキャラクターだけで構成されていたこともあり、物語への没入感が高まった。

イシュヴァールの内乱も迫力ある戦闘シーンとなっている
イシュヴァールの内乱も迫力ある戦闘シーンとなっている[c]2022 荒川弘/SQUARE ENIX [c]2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会

さらに、錬金術を使用するシーンの迫力、あり得ない規模でのアクションシーンが臨場感を増す。特に、エドとスカーの戦闘シーンには息を吞んだ。

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