挑戦し続ける俳優カン・ドンウォン、『ベイビー・ブローカー』は「一番自然な演技を披露した作品かも」IUとの“観覧車”名シーンの舞台裏も明かす
「『やっぱり!』と思いました。僕が誰よりも早く立ち上がったんですよ。ソン・ガンホさんよりも早かったです(笑)」。カン・ドンウォンは、第75回カンヌ国際映画祭にて、ソン・ガンホが最優秀男優賞を受賞した瞬間を思い出しながらこう語った。
『ベイビー・ブローカー』(公開中)は“赤ちゃんポスト”をきっかけに、ひょんなことから赤ん坊の実母と男たちが養父母探しの旅に出る姿を描く。是枝裕和監督特有の、心に沁みるストーリーテリングやキャストたちの好演で話題となっている。MOVIE WALKER PRESSでは、IUことイ・ジウンのインタビューに続き、カン・ドンウォンのロングインタビューをお届け。
『ベイビー・ブローカー』は、第71回カンヌ国際映画祭にて『万引き家族』(18)で映画祭の最高賞であるパルム・ドールを獲得した是枝裕和監督が初めて手掛けた韓国映画だ。カン・ドンウォンは借金まみれのクリーニング屋店主サンヒョン(ソン・ガンホ)と共に、赤ん坊を養父母に結び付けるブローカーのドンス役を演じた。
「シナリオ作業にも参加できた、とても意味深い作品です」
元々是枝監督と面識があったカン・ドンウォンは、『ベイビー・ブローカー』のシナリオを韓国の製作・配給会社に届けるなど、プロデューサーとしての役割もしっかり果たした。「シナリオ作業から参加して、プロヂュースさせて頂いたのは初めてでした。とても楽しくて、意味深い時間でしたね」と振り返ったカン・ドンウォンは、「是枝監督の現場での撮り方が独特で新鮮でした」と語っていた。
「韓国で撮影したので、現場の雰囲気はいつもとあまり変わらない感じでしたが、是枝監督がモニターを見ていないのがおもしろいと思いました。たまに隣に立って僕の演技をがんがん見てくる時もあって、『ちょっとやりづらい』と思ったことも正直ありますね(笑)。是枝監督は感情をディティールにわたって捉えてくださる方なので、『モニターには映らないところを隣で直接見ているんだ』と思いました。だからこそ映画館のスクリーンで観た時、役者の感情がより生々しく伝わってくると思います。といっても、動線以外には、『こういう風に演技して』というディレクションがほぼなかったですけどね。そこも印象的でした」
初めての日本の監督との撮影は特に大きな問題等もなく順調だったが、強いて言うなら、是枝監督と美味しいものを食べに行けなかったのが心残りだったという。
「是枝監督もずっと韓国に滞在していたので、撮影がない日は『監督はなにをやっているんだろう、ちゃんと美味しいものを食べていてほしいな』と思ったりしました。僕のおすすめグルメ情報もいくつか紹介しました(笑)。外国人の友達が一人で韓国に来ていると、すごく気になるんじゃないですか。同じ感覚で、『本当は寂しがっているのではないかな』というのが、一番心配でした。ちょうど新型コロナウイルスの感染者が増えている時期に撮影が行われたので、一度も会食ができなかったのもすごく残念でした」