『TELL ME ~hideと見た景色~』を観る前に知っておきたい…伝説のアーティスト、hideと彼の遺した音楽のこと

コラム

『TELL ME ~hideと見た景色~』を観る前に知っておきたい…伝説のアーティスト、hideと彼の遺した音楽のこと

X JAPANの解散で失意の中にいるファンに向けた、hideからの明るいメッセージだったはずが…

hideがI.N.A.ら仲間たちと新たに結成したバンド、hide with Spread Beaver
hideがI.N.A.ら仲間たちと新たに結成したバンド、hide with Spread Beaver[C]HEADWAX ORGANIZATION CO.,LTD. / Photo by HIDEO CANNO(CAPS)・YOSUKE KOMATSU(ODD JOB LTD.)

hide with Spread Beaverのスタートもセンセーショナルだった。1997年12月31日、東京ドームで行なわれた「THE LAST LIVE〜最後の夜〜」でX JAPANが解散。その翌日の1998年1月1日に発行された朝日新聞の全面広告で、hide with Spread Beaverの活動開始を発表したのだ。それからまもなくリリースされた「ROCKET DIVE」は、X JAPANの解散で失意の中にいるファンに向けたhideからのメッセージだった。さらにレイ・マクヴェイとポール・レイヴンと共にzilchを結成、2つのバンドで精力的に音楽活動を展開する予定だった。しかし、「ROCKET DIVE」を含めたシングル三部作として予定していた「ピンク スパイダー」と「ever free」のリリースを前に、彼は急逝した。

いまも多大な影響を与え続ける、hideの意志と彼の遺した音楽

『TELL ME ~hideと見た景色~』では、前代未聞とされた本人不在のツアーの模様も描かれる
『TELL ME ~hideと見た景色~』では、前代未聞とされた本人不在のツアーの模様も描かれる[c]2022「TELLME」製作委員会


残された弟とメンバーたちは、hideが遺した音楽をなんとか形にしようと奮闘した。同年10月にhide with Spread Beaverの未発表曲「HURRY GO ROUND」発売後、前代未聞となる本人不在のツアー「hide with Spread Beaver appear!!“1998 TRIBAL Ja,zoo”」を敢行し、11月にアルバム「Ja,Zoo」を発売。アルバムのリリース、ツアー実施に至るまでの弟とメンバーたち、スタッフ陣の苦悩は、『TELL ME ~hideと見た景色~』の劇中でも描かれている。“ファンへの想い”や“音楽に捧げた想い”といったhideが大切にしていたこと、バンドメンバーが大切にしていたこと、パーソナルマネージャーである裕士氏が大切にしていたこと、hideの家族が大切にしていたこと、スタッフ陣が大切にしていたこと。この作品は、すべての登場人物の“大切なもの”や“大切にしていたこと”が交錯している。それ故にそれぞれが背負ったものの重さや大きさが、苦悩や悲しみとなってズシリと伝わってくるのだ。アルバム「Ja,Zoo」に収録される予定だった未発表曲「子 ギャル」が実に16年という歳月をかけて完成し、2014年にリリースされた生誕50周年アルバム「子 ギャル」に収録されたことも話題となった。

hideの死から24年。筆者も同じだけ歳を取ったのだけれど、「ever free」の歌詞を口ずさむたびに、未だに年甲斐もなく胸がギュンギュンとするのだ。hideはいつもすぐ後ろにいて、不安になって振り返ろうとするその背中を、ごっついブーツでガツンと蹴り進めてくれる。そう、あの日パーソナルマネージャーになったばかりの裕士氏にしたことと同じように。そしてこう囁いてくれるのだ。「死ぬ気でやれよ、――」。続きの言葉はぜひ劇場で、直接hideから受け取ってほしい。それは必ず、あなたが明日を生きる糧となるはずだから。

生みだした音楽はもちろん、ファン想い、さらに仲間想いな人柄で、いまも愛され続けているhide
生みだした音楽はもちろん、ファン想い、さらに仲間想いな人柄で、いまも愛され続けているhide[C]HEADWAX ORGANIZATION CO.,LTD. / Photo by HIDEO CANNO(CAPS)・YOSUKE KOMATSU(ODD JOB LTD.)

文/大窪由香


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