“人生の宝物”と出会う旅『TANG タング』、大統領選挙の内幕を描く『キングメーカー 大統領を作った男』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、二宮和也主演で人気児童書を実写化する感動作、韓国政界の闇を描くポリティカル・サスペンス、2018年に実際に発生した少年たちの救出劇を描く実録ドラマの、胸に迫る3本。
三木孝浩監督による透明感のある瑞々しい映像…『TANG タング』(公開中)
イギリス発の世界的ベストセラー「ロボット・イン・ザ・ガーデン」を実写化した冒険エンターテインメント。無職でゲーム三昧の健(二宮和也)は、妻(満島ひかり)との仲も崩壊寸前。そんな折、家の庭に迷い込んだ旧式ロボットのタングを連れて、“人生の宝物”と出会う旅に出ることに。
まるで外国映画のような趣ある緑豊かなガーデンや、明るい日差しが降り注ぐ宮古島など、ビジュアルセンスに定評ある三木孝浩監督による透明感のある瑞々しい映像がふんだんに堪能できる。さらに高性能ロボットが家事を担う世界や、管理と統制が行き届いた街並みの様子は興味深く、ネオンが宙を舞う電脳都市にもワクワクさせられる。“ザ・人生迷い中”の健&タングのポンコツコンビは、それぞれが抱える問題に対峙していくことになるが、お互いが勇気を与えあう存在になっていく過程が丁寧に描かれ、彼らの絆や相手を大切に想うピュアな気持ちが乾いた心にじわじわと効いてくる。ディストピア系も嫌いじゃないけど、近未来映画はやっぱり夢と希望を感じさせる物語がいいよね!と、ふと気づかせてくれた爽やかな感動作。(ライター・足立美由紀)
政治の裏側をスリリングにえぐり出す…『キングメーカー 大統領を作った男』(8月12日公開)
韓国では『1987、ある闘いの真実』(18)、『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』(19)など、激動の現代史を背景にした政治ドラマが数多く作られており、もはや韓国映画界の十八番と言ってもいい。その系譜に新たに加わる本作は、1960~1970年代の実話をベースに“大統領選挙”の内幕を描いたポリティカル・サスペンスだ。
独裁政権打倒をめざす理想主義者の政治家ウンボムと、選挙で勝つためならダーティーな手段もいとわない参謀チャンデ。そんな同じ夢を共有しながらも、立場や信条の違いから反目し合う男2人の運命を描く。ソル・ギョング、イ・ソンギュンの二大実力派俳優が、男同士の友情と確執のドラマを濃密かつ熱く体現。さらに、与野党の両陣営が繰り広げるモラル無視の妨害工作、ネガティブ・キャンペーンを通して、きれいごとでは済まない政治の裏側をスリリングにえぐり出す。やはりこのジャンルの韓国映画にハズレなし、なのだ。(映画ライター・高橋諭治)
混沌を極めるいまの世界情勢にあって希望を感じさせてくる…『13人の命』(配信中)
2018年6月、世界中が「FIFAワールドカップ」に沸いているなか、タイ北部にある洞窟に進入した12人のサッカー少年とコーチ1名が予期せぬ暴風雨によって閉じ込められる事故が発生。タイ王国海軍や海外から集まった洞窟ダイバーらの活躍で少年たちは約2週間をかけて無事に救助されたが、その顛末を名匠、ロン・ハワードが「ドキュメンタリーか?」と見まがうほどの緻密さで映像化した。
事件から4年以上が経った現在、概要だけを聞くとあっさりした印象を受けるが、遭難が発覚した時点では少年たちが洞窟のどこにいて、生存しているかさえもわからない状況。発見されたあとも、入口までの狭く入り組んだ空間を片道約7時間も潜って進まなければならず、衰弱した彼らを連れだすのはほぼ不可能だったそう。そんな困難なミッションを3人の海外ダイバーを軸に、タイ政府や地元住民、少年たちの家族のドラマを交えながら描いていく。
潜水シーンの臨場感と映像美は抜群で、観ている側の息も苦しくなってしまうほど。一方で、物語に大きな起伏があるわけではないが、淡々と時間が進んでいくその展開も作品のリアリティにつながっているといえる。映画ファン的には、主人公のダイバーをヴィゴ・モーテンセン、コリン・ファレル、ジョエル・エドガードンが演じていることも胸アツなポイントだが、いい意味でそれぞれの個性を抑えていたのも新鮮だった。なによりも、世界各国から人々が集まり、犠牲を払いながらも少年たちを救おうとしたという事実に、混沌を極めるいまの世界情勢にあって希望を感じさせてくる。(ライター・平尾嘉浩)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼