「展開を知っていても背筋が凍る」南沙良が『この子は邪悪』で歪んだ愛の形を体感
世にも奇妙な家族の話を描いた映画『この子は邪悪』(公開中)で、主人公の窪花役を演じている南沙良。『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(17)で数々の新人賞を受賞し、2021年放送のドラマ「ドラゴン桜」や現在放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」など話題作に立て続けに出演し、注目を集めている。
かつて一家で交通事故にあった窪家。長女の花は心に傷を負い、心理療法室を営む父の脚には障がいが残り、母は植物状態に。そして、妹は顔に火傷を負ってしまった。そんな花の前に現れたのは、自分の母の奇病の原因を探る少年。少年と次第に心を通わせていく花だが、そんな折、植物状態の母が5年ぶりに目を覚まし、家に帰ってくる。“奇跡が起きた”とよろこぶ父だが、花は母に違和感を覚える。その時、街では謎の奇病が広がっていた。
「現場の空気感や共演者の方の芝居を受けて役を作っていくのが好き」
初めて台本を読んだ時は「とにかく結末に驚いた」と振り返る。「読みながら先を想像していたのですが、見事にどんどん裏切られる展開が待っていて、ページを捲るのが楽しかったです。私が台本でワクワクした感覚が、映画を観てくださる方に伝わるといいな、という想いで演じました。個人的にものすごく好きなタイプの物語です」と、劇中に終始漂う不穏な空気をまったく想像させない、無邪気な表情で微笑む。
本作で監督、脚本を務めるのは、『ノイズ』(22)などの脚本を手掛け、「さよなら、ムッシュ」で小説も執筆し、本作が長編監督3本目となる片岡翔。「監督とはシーンごとに、花の心情を確かめる作業をしました。少ない言葉で的を得た説明をしてくださるので、花の気持ちを拾いやすく、表現もしやすかったです」と監督との現場でのやり取りの様子を明かした。
花というキャラクターについては「家族で交通事故に遭って、自分だけ助かったという罪悪感を抱いています。体に傷は残っていないけれど、心に傷を負ってしまった女の子で、どこか暗く、重いものを背負っている印象でした。セリフが少ないぶん、表情などでしっかり花のキャラクターを表現できたら、という思いで演じました。私は、役を作り込んで現場に入るというよりも、現場の空気感や共演者の方の芝居を受けて役を作っていくのが好きですし、合っている気がしています。今回もそのやり方でアプローチしました」と役作りを解説した。