満島ひかりの伸びやかな感性と、女優としての理想「“演じる”ことはあまりしないでいられたら」

インタビュー

満島ひかりの伸びやかな感性と、女優としての理想「“演じる”ことはあまりしないでいられたら」

『かもめ食堂』(06)などの荻上直子監督が、“おいしい食”と“ささやかな幸せ”を綴った映画『川っぺりムコリッタ』(公開中)。特集掲載中のMOVIE WALKER PRESSでは、松山ケンイチら主要キャスト4人にリレーインタビューを実施。最終回は、松山が演じる主人公、山田たけしが住む川べりにある古いアパート“ハイツムコリッタ”の大家、南詩織役を演じた満島ひかりが登場。荻上組の舞台裏や、おいしいご飯にまつわるエピソードを語ってくれた。

「人もほかの生き物も自然も、同等に描かれているように見えたんです」

様々な事情を抱えるハイツムコリッタの住人たちは、次第に心を通わせていく
様々な事情を抱えるハイツムコリッタの住人たちは、次第に心を通わせていく[c] 2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会

人目を避けて暮らそうと、築50年のハイツムコリッタに引っ越してきた孤独な男、山田。彼が、いきなり「風呂を貸してほしい」と自分の部屋に上がり込んできた隣人の島田(ムロツヨシ)や、墓石の販売員をしている溝口(吉岡秀隆)、そして未亡人の大家、南といった様々な事情を抱えた住人たちと交流していくなかで、かたくなだった心が解きほぐされていく。

脚本を読んだ満島は、「ともすれば重くもなりそうな題材ですが、読んでいて癒されたほどでした」と、本作の物語に引き込まれたという。「突然展開される謎の場面も含めて、自然だなと思いました。世界は謎にあふれていて、分からないことも不思議なこともたくさんありますよね。荻上さんの描く視点は想像を遥かに超えて、優しくて好きな感じでした。特に、映画のなかで人間ばかりがメインに扱われていないのが好きでした。人もほかの生き物も自然も、同等に描かれているように見えたんです」。


脚本を読んで、本作の世界観に引き込まれたという満島ひかり
脚本を読んで、本作の世界観に引き込まれたという満島ひかり撮影/石田真澄

鹿児島県生まれ、沖縄県育ちの満島は「自分の故郷も自然にあふれ、台風も毎年来ます。そういうところで生きてきたからこそ、本作の物語に真実味を感じました」と言う。脚本を読んで「荻上監督と会ってみたい」と思った満島は、監督と話す場を設けてもらうことに。その場で松山、ムロ、吉岡たちのキャスティングについて「意地悪なキャスティングですね(笑)」と荻上監督にツッコんだとか。

「俳優さんご本人の本質をついているようにも感じて、おもしろいキャスティングだなと思ったんです。まっさらなまま正直に生きて、小さな雑念と葛藤する山田役は松山さんにぴったりだし、エンターティナーだけれど、本当は寂しさとか孤独を誰よりもよく知っているんじゃないかなと思ってしまうムロさん、子どものころからたくさんの名優さんと生きてきた吉岡さんが、かつての自分のような、小さな男の子と一緒にお墓を売る役柄を演じることも…。私がちょっと深読みしすぎたのかもしれませんが」と苦笑い。

満島ひかりが、古いアパート“ハイツムコリッタ”の大家で未亡人の南詩織役を演じる
満島ひかりが、古いアパート“ハイツムコリッタ”の大家で未亡人の南詩織役を演じる[c] 2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会

「それで、南さんの役はなぜ私なのでしょう?と聞いてみたら、ニュアンスでしか覚えていないのですが、『クレイジーな人を探していたんです』というような答えが返ってきました。『そんなことないですよ』と返したら『いや、そうなんですよ』と(笑)。監督は『“大人になってもなおクレイジーな人”に憧れていたけど、予定通りにはいかなかった』みたいなことをおっしゃっていて(笑)。おもしろいですよね。十分、クレイジーな荻上さんなのになーと私は思っています」と笑う。


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