一度乗ったら降りられない激烈トラベル『ブレット・トレイン』、ポジティブな羨望を覚えさせる『さかなのこ』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、伊坂幸太郎の「マリアビートル」をブラッド・ピット主演で映画化したアクション、さかなクンの自叙伝をベースに好きに真っ直ぐな“ミー坊”の姿をポップに描くドラマ、南沙良&大西流星共演である家族の謎に迫るサスペンスの個性豊かな3本。
一度乗ったら降りられない激烈トラベル…『ブレット・トレイン』(公開中)
伊坂幸太郎の小説をハリウッドで映画化した大注目のアクション。主演がブラッド・ピット、舞台が日本となれば、見逃すわけにはいかない。
主要な舞台は、東京を発車した高速列車の車内。ブリーフケースを盗んで次の駅で降りるだけの簡単な仕事を受けた、運の悪い殺し屋が、予期せぬ事態によって列車を降りられなくなる。命をねらって次々と乗り込んでくる、ライバルの殺し屋たちとの攻防はスリリングそのもの。アクロバティックかつスピーディなアクションを連ねる、『デッドプール2』(19)のデヴィッド・リーチによる演出も冴えわたる。『キル・ビル』(03)ばりの漫画のような日本の描写もユーモラスで妙味たっぷり。一度乗ったら降りられない、激烈トラベルを体感せよ!(映画ライター・有馬楽)
ポジティブな羨望を覚えさせる会心作…『さかなのこ』(公開中)
自叙伝「さかなクンの一魚一会 〜まいにち夢中な人生!」をベースに、『横道世之介』(13)コンビ“監督、沖田修一×脚本、前田司郎”が実写映画化。『おらおらでひとりいぐも』(20)など近年ますます自由度を増す沖田監督が、主役のさかなクン役に据えたのはなんと、のん。それが功を奏し、目論見通り“男か女かはどっちでもいい”風通しの良い作品世界に、ユーモラスで爽やかさが吹き抜ける。“こんな風に生きられたら”と、ポジティブな羨望を覚えさせる会心作だ。
幼少より魚が大好きなミー坊は、理解ある母のお陰もあってすくすく育ち、大好きな魚を追求する高校生(のん)に。魚への情熱と豊富な知識で、地元の不良らとも仲良くなってしまうミー坊の夢は、“お魚博士”。しかし勉強嫌いで、大学には入れない。それでも自立しようと一人暮らしを始めたミー坊は、大好きな“お魚”と関係しながら生きる道を模索する――。
いわゆる“KY”なミー坊が、独特のパワーで不良たちを手なずけるシーンをはじめ、クスクス笑いが満載!マンガ的でありながらリアルからも離れず、この社会で“好き”を貫く困難や生きにくさも描き込まれる。そのバランスが、さすが沖田監督。登場人物全員、愛おしく好きにならずにいられない。生きにくい現代の鬱屈をさりげなく吹き飛ばす、楽しく意表も突く愛すべき青春、人間賛歌だ。(映画ライター・折田千鶴子)
観る者の想像のさらに上を行くおぞましい結末…『この子は邪悪』(公開中)
TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2017の準グランプリ作品を、発案者の片岡翔監督が自ら大胆な脚色を加えて映画化した本格サスペンス・スリラー。過去の交通事故で窪家の長女、花は心に傷を負い、心理療法室を営む父、司朗は脚に障害が残る。妹の月(ルナ)は大火傷で爛れた顔を隠す白い仮面を常につけ、植物人間状態になった母の繭子は病院で眠り続けていた。そんなある日、司朗が5年ぶりに目を覚ました繭子(桜井ユキ)を連れて帰ってくるが、その顔はまったく別人のものだった…。
一体この家でなにが起こっているのか?違う顔なのに家族の過去を知り、本人としか思えない華麗なピアノ演奏の腕を持つ繭子の正体は?そんな家族の謎と衝撃の真実に、花を演じた南沙良と彼女の幼馴染の純に扮した「なにわ男子」の大西流星が迫っていく展開がスリリング!
すべての謎の鍵を握る司朗に扮した玉木宏の催眠療法と絶対に崩さない笑顔も不気味で、彼と対峙する大西と南の心理バトルにも息をのむ。全編に謎を解くヒントが散りばめられているが、観る者の想像のさらに上を行くおぞましい結末では間違いなく背筋が凍りつくに違いない。必見!(映画ライター・イソガイマサト)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼