10年経っても愛される『横道世之介』に、沖田修一監督も驚嘆!「こんなに長生きする映画になるなんて…」
さかなクンの自叙伝を原作とした最新作『さかなのこ』では、『横道世之介』で共同脚本を務めた前田司郎との再タッグが実現。両作の共通点について訊かれると「『さかなのこ』の主人公のミー坊は、ずっと変わらずに周りを巻き込んでいき、その周りの人たちが勝手に変わっていく。その感じは世之介と似ていると思います」と語りながらも、「全然そのつもりはなかったんですけどね」と笑う沖田監督。
「作品ごとに違うことをやろうと、新しい挑戦をしているつもりではあるのですが、こうして特集上映などで昔の作品を見返してみるといろんなところが似ていると感じます」と、これまで手掛けた自作を客観視しながら、人の顔のアップからシーンを始める癖や、擬似家族や擬似親子を描くテーマなどの類似性を自ら挙げていく。また近作では“親目線”の描写が増えたことについて触れながら「自分がその立場になったからかもしれませんね。『さかなのこ』では井川遥さん演じるお母さんがミー坊を助けてくれる。そういう親になりたいなと思います」。
そして「僕のなかにある“ヒーロー像”は、特別じゃないということ」と、『横道世之介』の世之介や『モリのいる場所』(18)で山崎努が演じた熊谷守一、『さかなのこ』のミー坊など沖田作品に一貫している主人公像にも言及。「同じように傷ついて、どう生きていいかわからないみたいな人であってほしい。どこにでもいる日本人みたいなところを主人公のヒーロー像として映画を作っています」と自身の作家性を見つめていた。
文/久保田 和馬
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