伝承の民話のような味わい『LAMB/ラム』、誰の心にも愛しく染みる『犬も食わねどチャーリーは笑う』など週末観るならこの3本!

コラム

伝承の民話のような味わい『LAMB/ラム』、誰の心にも愛しく染みる『犬も食わねどチャーリーは笑う』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、ノオミ・ラパスが主演を務め、羊飼いの夫婦が”奇跡”と出会って恐ろしい出来事に巻き込まれていくスリラー、市井昌秀と香取慎吾がタッグを組み、本音がぶつかりあう夫婦のドタバタを描くコメディ、ロック好き学生がラモーンズを味方に、ロックを取り締まる校長に立ち向かうロックムービーの、心を突き動かされる3本。

不思議な体験を味わえる異色作…『LAMB/ラム』(公開中)

墓の前に座るマリア(ラパス)。墓に刻まれた名前とは(『LAMB/ラム』)
墓の前に座るマリア(ラパス)。墓に刻まれた名前とは(『LAMB/ラム』)[c]2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-JAKSIK,HELGI JÓHANNSSON

アイスランドの山間で牧羊を営む夫婦。いつものように羊の出産に立ち会った彼らは、産まれた“なにか”に驚きつつ、自分たちの子どもとして育てようと決意する…。その“なにか”の実体が見えそうで見えない映像が続き、心がざわめきまくるが、夫婦の甲斐甲斐しい子育てに観ているこちらも温かな気分になり、やがて現れたその全体像も優しく受け入れてしまう、という不思議な体験を味わえる異色作。

白夜のアイスランドが舞台のせいか、非日常のドラマにかかわらず伝承の民話のような味わいも。しかし奇妙な風景に目が馴染んだあとも、中盤、クライマックスと超衝撃なシーンが用意され、観た後のインパクトは絶大。そして夫婦の関係、彼らの過去を重ねると、結末に様々な想像力も広がる。本作の北米配給は、『ミッドサマー』(19)などで人気の映画会社「A24」だが、同社の中でもかなり振り切れた作風。A24のファンには最高の時間となることだろう。(映画ライター・斉藤博昭)

笑いと涙の緩急の付け方がさりげなくて上手い…『犬も食わねどチャーリーは笑う』(公開中)

【写真を見る】”旦那デスノート”を巡って香取慎吾&岸井ゆきのの夫婦喧嘩が開始する『犬も食わねどチャーリーは笑う』
【写真を見る】”旦那デスノート”を巡って香取慎吾&岸井ゆきのの夫婦喧嘩が開始する『犬も食わねどチャーリーは笑う』[c]2022 “犬も食わねどチャーリーは笑う”FILM PARTNERS

『台風家族』(19)では草なぎ剛を主役に“セコくてちっちぇ~男”で笑いと奇跡の感動を起こした市井昌秀監督が、今度は香取慎吾を主役に、“鈍感なダメ夫”の純情で、またも笑いと感涙を誘う。『箱入り息子の恋』(13)も含め、ダメな男たちが楽しくて愛しい!

結婚4年目、周囲からは仲良し夫婦と思われる裕次郎(香取)と日和(岸井ゆきの)だが、日和の心の中は真っ黒!表面は取り繕いながら、鈍感な夫の文句をSNS“旦那デスノート”にぶちまける。ところが、その書き込みに夫が気付き、日和の本音を知ってしまい…。

旦那デスノートに書き込まれた妻たちの暴言に、“あるある~”と爆笑必至。日和と一緒になって裕次郎を心の中でなじっていると、不器用ながら必死で思いを伝えようとする裕次郎の姿に胸を打たれ、不覚にも落涙!まわりの雑音もかまびすしい現代、互いの気持ちが見えなくなることが多いが、積み重ねてきた夫婦やパートナーとの時間が、きっと誰の心にも愛しく染みるハズ。笑いと涙の緩急の付け方がさりげなくて上手く、素直にそんな気持ちにさせる。裕次郎の職場の仲間たち──余貴美子、的場浩司、井之脇海らが、また最高!(映画ライター・折田千鶴子)


10代のリアルが効いている…『ロックンロール・ハイスクール』(公開中)

パンクロックバンドのラモーンズが出演し、自由な音楽を手に入れるため学生たちが奮闘する『ロックンロール・ハイスクール』
パンクロックバンドのラモーンズが出演し、自由な音楽を手に入れるため学生たちが奮闘する『ロックンロール・ハイスクール』[c] 1979 New World Productions Inc. All Rights Reserved.

パンクロックの伝説となったバンド、ラモーンズが出演した1979年の青春映画が、日本の映画館に初登場!新任の横暴な校長に抑圧される高校生たちが、禁止されてしまったラモーンズのライブに行くために奮闘。物語自体は徹底的にコミカルで、性に興味津々の若者たちのドジ描写をはじめ、スラップスティックな逸話は、真剣に見たらバカバカしく映るだろう。

とはいえ、好きなアーティストに近づきたい、教師という名の権威がウザいなどの10代のリアルが効いているのも事実。そこにラモーンズのブレないパンクロックが重なることで生じる、特異なパワー。彼らのライブ演奏シーンを含め、これは映画館のスクリーンで、ぜひ体感したい!(映画ライター・有馬楽)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

※草なぎ剛の「なぎ」は弓へんに前の旧字体、その下に刀が正式表記

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