「再びどっぷりと“ダウントン・アビー沼”にハマれた!」豊田エリー、中瀬ゆかり、ハリー杉山…ファンが愛に満ちた劇場最新作を語り尽くす
「見終えたあとは再びどっぷりと“ダウントン・アビー沼”にハマれた」(中瀬ゆかり)
コメンテーターとしてテレビ出演もしている編集者の中瀬ゆかりからも、本作を支持する声が届いている。
まず、本編を鑑賞した率直な気持ちについて、「いったん終わったドラマシリーズの続き、しかも映画としての2作目、という意味でどんどんハードルが高くなっているのに、やすやすと超えてくるのは『さすが』としか言いようがありません。すばらしい登場人物たちの顔ぶれと、練り上げられた脚本によって、観終えたあとは再びどっぷりと“ダウントン・アビー沼”にハマれた深い満足と、心の深いところに響いた感動でしばらく言葉が出なかったです。ラストは絶対に涙しますのでファンならば見逃し禁止です」と大絶賛。
さらに、「大好きなバイオレットおばあさまの過去にかかわる内容で、おばあさまが突然相続することになった南フランスの別荘を訪れる伯爵夫妻一行の思いがけない騒動と、館を舞台に撮ることになった映画撮影隊とのやり取りが2本軸になっていて、南フランスのすばらしい景色やフランス貴族との邂逅、そしてトーキーに移行していく時代の映画の端境期、という、まさに『新たなる時代へ』の過程を見られて、映画好きとしてはそちらの興味も手伝って大満足でした」とも。本作で描かれる、ダウントン・アビーでの映画撮影パート、南仏への旅パートの両方が胸に刺さる展開の連続だったと説明する。
バイオレット以外で印象的だったキャラクターには、撮影のためにダウントン・アビーに滞在することになった映画スターのマーナ・ダルグリーシュ(ローラ・ハドック)とガイ・デクスター(ドミニク・ウェスト)を推している。
「ハリウッドスター役の2人がいかにも“スター!”という感じで存在感を光らせていたのがよかったです。特にガイ・デクスターがちょいワルの野性味あふれるルックスに優しさがにじみ出ていて、個人的に超好みのタイプでした」。
本作の見どころを尋ねると、本作での新たな“出会い”と発見に興奮したようだ。「メアリー様が映画撮影のあることで思わぬ才能を見せるところです。わくわくしました。あとは、今回もいくつか繰り広げられる恋愛模様のあれこれ、特に“新しい恋の予感”がするある登場人物の2人きりのシーンと台詞には胸がキュンキュンしました」。
そもそも、中瀬が「ダウントン・アビー」のファンになった理由はなんだったのだろうか?「もともと群像劇や人間の深掘りドラマが好きなんですが、シーズン1がタイタニック号沈没事故を報道するところから始まり、その後もいきなり登場人物が亡くなったりと、スリリングな展開をみせるこのドラマにくぎ付けになりました。伯爵家側も使用人側も、出てくるキャラクターたちがとても魅力的で、変わりゆく時代を背景にその1人1人の運命を彩るドラマの脚本がまたすばらしい。次がどうなるのかにまったく目が離せず、気がつけばどっぷりと“ダウントン・アビー沼”にハマっていました。おそらく生涯観たドラマでここまで物語の住人になりきって観たものはないかもしれません。あの哀愁と威厳溢れるテーマ音楽が流れるだけで心臓が高鳴ります」。
未見の人でも楽しめる作品だと以下のように語ってくれた。「本作で主要キャストが総出演しているので気になる登場人物には目を付けておいてほしいです。本作でちょい役に見えても、それはそれは長くて深い過去がある人物ばかりです。個人的には、イケメン執事のトーマス・バロー(ロブ・ジェームス=コリアー)のことを気にしておいてほしいと言っておきましょう。彼がここまで有能な執事になる道筋を知っている人には感慨深い場面があります。未見の方が、これをきっかけにドラマ版にハマることになるのなら、これから『ダウントン・アビー』を1から観られるなんてうらやましすぎます。この世界にハマらない人がいたら理由がわからないとまで断言しちゃいます(笑)。まずは、『ようこそ、“ダウントン・アビー沼”に!』と言いたいですね」。
「ドラマの向こうにあるそんな移り変わる時代背景も魅力的」(山崎まどか)
最後に、コラムニストの山崎まどかからの言葉もお借りしたい。最新作を観た率直な感想を聞いてみると、「大恐慌前、第二次世界大戦前のちょうどいいところにクライマックスを持ってきたな、と思いました。登場人物の(ほぼ)全員が幸せな結末を迎えて、ファンのみんながホッと胸を撫で下ろすような。南仏が流行した時代で、テニスやチャールストンのような華やかな当時の風俗もある。かつ、トーキーの映画の話が実際の貴族の館で撮られていた『ダウントン・アビー』というドラマに対するメタというか、一種の楽屋落ちにもなっていて、サービス精神満点の完結編でした」との回答が。ファン感涙の大満足である作品と同時に、作品構造も実に巧みであることを指摘している。
そんな山崎がお気に入りのキャラクターに上げたのが、元下僕で現在は学校の校長で愛されキャラのモールズリー(ケヴィン・ドイル)。「もはやダウントンの使用人ではないのにしっかり出番があって、しかもおいしいところを持っていく。ドラマ本編の前半で消えてもおかしくなかったはずのキャラなのに…」。
実は大の映画ファンであることが明かされるモールズリーが、本作でも意外な活躍を見せることにも言及。「今回も謎の存在感を発揮して、場をさらっていきました。モールズリーさんが映画監督にある提案をして熱弁を振るうシーンです。試写会場でも爆笑が起こっていました」。
「ダウントン・アビー」が長きにわたって愛される理由については以下のように説明する。「貴族の館という限定された空間の物語にもかかわらず、20世紀の前半、どんな風に世の中が変わっていったかが垣間見えるところです。女性たちのファッションも移り変わり、コルセットをしなくなると、食事の席でも活発に議論に参加し、行動範囲も広くなり、少しずつ意識が変わって自由になる。ドラマの向こうにあるそんな背景も魅力的です」。
格式高い英国の貴族社会を背景に、現代を生きる私たちとも親和性の高い物語が展開されてきた「ダウントン・アビー」。華麗なファッションはもちろん、世界観にリアリティを与える建造物や宝飾品などの小道具、印象的な音楽もシリーズの魅力だ。作品を追い続けてきたダウントニアンはもちろん、入門編としてもオススメなので、シリーズ未見の人も『ダウントン・アビー/新たなる時代へ』を劇場で堪能してほしい。
構成・文/サンクレイオ翼