かわいい顔して由緒正しき“裏社会もの”!?『バッドガイズ』、2本観て完成する『僕愛』『君愛』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、凄腕怪盗集団“バッドガイズ”が思わぬ陰謀に巻き込まれていくドリームワークス最新作、それぞれが独立しつつも2作読むと結末の印象が変わるという斬新な小説をアニメ化したラブストーリー、久保田直と田中裕子がタッグを組み、夫を待ち続ける2人の女性の姿を描くヒューマンドラマの、バラエティ豊かな3本。
かわいい動物映画にしっかり不良性を持ち込むのはさすが…『バッドガイズ』(公開中)
「シュレック」や「ボス・ベイビー」などアクの強い作品群でファンを魅了してきたドリームワークス・アニメーションの最新作は、スゴ腕盗賊団が大暴れする痛快作だ。ウルフ率いる怪盗集団“バッドガイズ”は、難易度の高いお宝“黄金のイルカ”強奪に失敗。更生したフリをして自由の身になった彼らは再び黄金のイルカを狙うが…。
ストーリーや展開は『オーシャンズ11』(02)など盗賊ものや『パルプ・フィクション』(94)などタランティーノ作品を彷彿とさせる由緒正しき裏社会もの。かわいい動物映画にしっかり不良性を持ち込むあたり、さすがドリームワークスだ。もうひとつ注目したいのがそのビジュアル。3DCGでありながら絵のタッチやアクションは手描き風で、その“ラフさ”が躍動感を盛り上げる。その一方で繊細なキャラの毛並みやライティング、クライマックスのスペクタクルなど3DCGならではの見せ場も盛り込まれている。子どもはもちろん、大人もきちんと楽しめるファミリーエンターテインメントだ。(映画ライター・神武団四郎)
2本観ることで一つの物語が完成…『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』(公開中)
観る順番により結末や物語の印象が変わると言われている本作、どちらを先に観るかは観た後にどんな気持ちになりたいかを考えて選ぶのがおすすめだ。
「人生は選択の連続」という言葉の通り、様々な場面において自分で選ばなければいけないことが山ほどあるが、本作では主人公が選んだ「もしも」のその先を描いた2つの物語が展開していく。「両親の離婚でどちらについていくか…」の選択後に主人公の歩む道は変わっていくが、この選択により彼の人生のすべてが変わるわけではない。ゆえに、2作に同じ設定や描写も登場するのも面白く感じるポイントだ。観る順番で印象が変わることも興味をそそるが、2本観ることにより一つの物語、主人公、暦(声:宮沢氷魚)の物語が完結するところにも注目だ。(ライター・タナカシノブ)
トーンは静かだが、その内面にパッションが熱くはじける…『千夜、一夜』(公開中)
2014年の『家路』に続いて、久保田直監督が青木研次のオリジナル脚本を映画化した人間ドラマ。佐渡島を舞台に、30年前に突然失踪した夫をいまも待つ登美子(田中裕子)と、やはり夫が失踪した奈美(尾野真千子)という、2人の“待つ女”を描いている。田中裕子の演技が圧巻で、老いた母親を介護して普通に生活しながら、胸の内には夫への狂おしいまでの想いが渦巻いている女性を、見事に表現している。奈美は、自分の人生を先へ進めるために夫が失踪した理由を知りたくて彼を捜しているが、登美子はその段階をすでに超えていて、面影すらなかなか思いだせなくなった夫への、想念を糧に生きているかのようだ。
田中裕子、青木研次のコンビ作には、名編『いつか読書する日』(05)があったが、あの作品で田中裕子は初恋の男性をいまも思いながら、牛乳配達とスーパーの仕事している独身女性を演じた。一つの想いを秘めて生きる女性の強さと心の揺れを、青木は田中裕子の中に求めているのかもしれない。生き方の違いから奈美が登美子とぶつかる、女優2人の対決シーンも見どころで、トーンは静かだが、その内面に登場人物たちのパッションが熱くはじける、見応えのある作品になっている。(映画ライター・金澤誠)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼