「ONI」堤大介監督と岡田麿里にインタビュー!2人が心を寄せた、“はじかれ者”としての鬼
「カルビンは、おなりが見ていた世界を、また違う角度から見ている存在」(堤監督)
――キャラクターの中に、カルビンというメガネをかけたアフリカ系の男の子がいます。
岡田「シナリオ作業が始まってから、企画の初期ではウシワカという日本人の少年を出そうとしていたと言われて。それはおもしろいなと。堤監督が描こうとしている物語に、絶対に必要なキャラクターだと思ったんです。そこでどういう男の子ならいいのか、設定をいろいろ考えていった結果、ウシワカがカルビンというキャラクターになっていったんです」
堤「ウシだからカルビ、ということで名前がカルビン。ワカだから名字がヤング(笑)。でも、岡田さんがこの作品にカルビンが必要だとプッシュしてくれたことは大きかったです。カルビンは途中から登場するキャラクターですが、おなりが見ていた世界を、また違う角度から見ている存在で、カルビンを登場させることは、『ONI』の制作においてブレイクスルーになりました」
――『ダム・キーパー』は、集団の中心からはずれた人物が主人公でしたが、「ONI」のおなりも似たタイプの主人公です。堤監督の関心がそこにあるということでしょうか。
堤「自分の過去を振り返ってみると確かに、自分が“ちょっと違う”ことに苦しんだ時期はありました。それは多くの人にも身に覚えのある感覚だと思います。僕はその後、アメリカに来て救われたというか、自分がマイノリティになったことで『みんな違っている』ことが当たり前になって楽になった部分もあって。そういう“はじかれた者”的な開き直りの部分はあると思います。岡田さんとすごく気が合ったのも、そこが共有できていたからなんじゃないかと思います」
岡田「私は、開き直ってはいないんじゃないかな(笑)」
堤「(笑)。でも岡田さん、英語でいうところの“Honesty”、率直にさらけ出す感じがあって、この作品は岡田さんとじゃなかったら出来なかったです」
――今回、ストップモーションアニメ風の3DCGです。この表現スタイルを選んだのはどういう理由でしょうか。
堤「実は、『ONI』はもともと全編コマ撮りの企画だったんです。題材的にも、付喪神(つくもがみ)のように、“ものに魂を宿らせる”コマ撮りが最適だろうと。ただ作品の規模が大きくなっていく過程で、これはコマ撮りでは難しいだろうというプロデューサーの判断がありました。そこはすごく無念だったんですが、僕の中で当初ドワーフさん(『リラックマと遊園地』などを手掛ける立体アニメーションの制作スタジオ)と考えたルックを捨てきれなくて、3DCGでそこを追求しました。動きすぎないように、コマ数も、1980年代の日本のアニメを参考に、少ないコマ数で動いてみえるものを目指しました」