『ショーシャンクの空に』との意外な関係性も!「シャイニー・シュリンプス!」監督2人が語る続編制作の舞台裏

インタビュー

『ショーシャンクの空に』との意外な関係性も!「シャイニー・シュリンプス!」監督2人が語る続編制作の舞台裏

フランスに実在するゲイの水球チームをモデルにして笑いと涙のストーリーを紡ぎ、本国フランスで大ヒットを飛ばすばかりか、世界中を魅了した『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』(19)。そんな人気作から、偏見や差別を軽々と飛び越える魅力的なキャラクターたちが帰って来た。待望の続編『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』(10月28日公開)は、愛すべき水球チーム、シャイニー・シュリンプスの面々がLGBTQ+によるスポーツと文化の祭典「ゲイゲームズ」の開催地、東京へ向かう旅の珍道中を描いている。同性愛を“病気”と認定している極寒の某国で足止めを食らってしまった彼らの運命は!?

水球チーム、シャイニー・シュリンプスのメンバーたちは東京へ向かう
水球チーム、シャイニー・シュリンプスのメンバーたちは東京へ向かう[c] 2022 LES IMPRODUCTIBLES - KALY PRODUCTIONS - FLAG - MIRAI PICTURES - LE GALLO FILMS

前作に続いて監督を務めた、セドリック・ル・ギャロマキシム・ゴヴァールは、いずれもフランスで映像作家として確かなキャリアを築いてきた。前者は実在するシャイニー・シュリンプスのメンバーでもある。そんな彼らが、本作に込めたメッセージとはなにか。来日した2人に製作の舞台裏について話を聞いた。

「今回の映画はシャイニー・シュリンプスがまず笑わないとコメディとして成立しない」(ル・ギャロ)

――ヒット作の続編製作にはプレッシャーもあると思いますが、どんなことがモチベーションとなったのでしょう?

水球チーム、シャイニー・シュリンプスに個性あふれる面々が集まっている
水球チーム、シャイニー・シュリンプスに個性あふれる面々が集まっている[c] 2022 LES IMPRODUCTIBLES - KALY PRODUCTIONS - FLAG - MIRAI PICTURES - LE GALLO FILMS

ゴヴァール「お金に決まってるじゃないですか!いや、ジョークですよ(笑)」

ル・ギャロ「正直なところ、最初は続編の話は断ろうと思っていたんです。同じことを繰り返したくないですしね。でも、続編を作れるチャンスは人生でそうあることじゃない。それに、この手のテーマでの続編は珍しいし、前作よりも予算をかけられます。僕としても、もっと告発したいことがあったし、そのため前作とは異なる、政治性のある物語になったんです」

――その“告発したいこと”は同性愛を政治的に抑圧する国の存在ですよね?これはなかなかヘビーなテーマですが、コメディというジャンルに落とし込むのは苦労されたのでは?

マキシム・ゴヴァール監督がコメディ制作に込めた想いを明かす
マキシム・ゴヴァール監督がコメディ制作に込めた想いを明かす

ゴヴァール「確かに、脚本を書いている段階でその点には苦心しましたよ。その頃、フランスの映画館では『パラサイト 半地下の家族』が公開されていたんですけど、これは参考になると思って、何度か観たんです。社会風刺からスリラーになり、でも笑えるし、ひとつのジャンルに収まらないすばらしい作品でしたからね。もちろん、あの映画を僕らの作品と比較する気はない。ただ、コメディは僕らにとって、大事なジャンルです。笑いにできないようことを、どうすれば笑いに持っていけるか?それは難しいことではありますが、深刻なことも一歩引いて見れば笑えることがあります。観客の感情に訴えるためにも、僕らはとにかく笑いを追求しました」


――日本人としてはお恥ずかしい話ですが、日本にも同性愛を病気であると断じる政治家はいます。世界中どこにでもそのような悪しき保守派がいますが、ル・ギャロ監督はシュリンプスの一員としてそのような政治的な弾圧を経験したことはありますか?

セドリック・ル・ギャロ監督はモデルとなった実在水球チーム、シャイニー・シュリンプスのメンバー
セドリック・ル・ギャロ監督はモデルとなった実在水球チーム、シャイニー・シュリンプスのメンバー

ル・ギャロ「幸運なことに、僕や僕の友人が政治的に弾圧を受けたことはないです。ただ、そういう現実があるということは知っています。フランスも昨年ようやく、同性愛の更生施設を禁止する法案ができました。それまでは、信仰を隠れ蓑にした更生施設が存在していたこともあったんです。現在、法で禁止されたとはいえ、目に見えないところにそういう施設が潜んでいるとも考えています。今回の映画の脚本は、そのような更生施設を扱った多種のドキュメンタリーからインスピレーションを受けました。多くは確かに恐ろしいけれど、ドキュメンタリーを見ていたら不条理を通り越してバカバカしかったですよ。電気ショック療法にしても、ロールプレイングの心理療法にしても、まったく無意味で笑ってしまったほど。そういう意味では、今回の映画はシュリンプスを笑うのではなく、シュリンプスがまず笑わないとコメディとして成立しないと思います。どんなに最悪な状況でも、彼らは笑うことができるんです」

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